腎臓がんの凍結療法

この治療法は4cm以下の腎臓がんに対して2011年の7月から健康保険適用になりました。高齢者や、他の疾患のために手術が困難な場合、手術を受けることを拒否する場合に行われます。

手術には、冷凍手術器と接続している長さ20cm、直径1.5mmほどの特殊な針が使われます。この針はマイナス185度まで冷却されます。

手術は局所麻酔で行われます。MRIで病巣を確認して、体表からがんに向かって針を刺していきます。そこで針を一気に冷やしてがんを凍らせて死滅させるのです。10分冷凍してから2分休憩し、また10分冷凍するという2回冷凍が行われます。治療は短期間で終了し、通常は1泊2日で退院できます。

1本の針で周囲2cmの範囲を凍らせられ、2本使えば3cm凍らせられます。針は最高で5本まで使えます。冷凍する範囲はがんの辺縁から5mm以上広くする必要がありますので、3cmのがんなら4cm冷凍する必要があります。但し、針のさせないような場所や血が止まりにくい場合この治療は出来ません。

凍結療法は、放射線や化学療法とは全く異なるメカニズムでがん細胞を壊死させるため、放射線や化学療法が効きにくいがんに対しても効果が期待できます。また、低侵襲(体の負担が少ない)ことも特徴のひとつです。放射線治療との違いとして、凍結部位に再発を来たした場合に繰り返し治療が行えるというメリットもあります。

腎臓がんのほかには、前立腺がんや肝がん、乳がん、肺がん、子宮頸がん等の治療として治験が行われています。

注意したい卵巣欠落症状-骨粗しょう症

卵巣がんなどの治療のために閉経前の人が両方の卵巣を切除したり、卵巣を残していても放射線療法などの影響で機能が失われた場合、「卵巣欠落症状」が起こることがあります。顔のほてりやのぼせ等、いわゆる更年期障害と同じような症状が現れます。症状の現れ方には個人差があり、一般的には若い人ほど強く出る傾向があります。

その卵巣欠落症状のなかでも注意が必要なものが骨粗しょう症です。

骨の新陳代謝には、新しい骨を作る「骨芽細胞」と古い骨を壊す「破骨細胞」が関わっています。女性ホルモンのエストロゲンには、「破骨細胞」の働きを抑える作用があり、そのおかげもあって骨芽細胞と破骨細胞がバランスよく働いているのです。しかし、卵巣を切除してエストロゲンが分泌されなくなると、「破骨細胞」の働きが「骨芽細胞」の働きを上回ってしまい、骨粗しょう症が起こりやすくなるのです。

骨粗しょう症を予防するポイントは食事と運動です。

食事は栄養バランスを考え、特にカルシウムやマグネシウムが不足しないように気を付けましょう。

また、骨を強くするために、骨に刺激を与える運動も必要となります。ウォーキングやストレッチなどを行い、定期的に骨密度の検査も受けることも忘れないようにしましょう。

子宮体がんの標準治療

子宮体がんの標準治療は、子宮と卵巣、卵管を摘出する手術が中心となります。

厳密にはがんとは言えない子宮内膜異型増殖症の場合は単純子宮全摘出術が適用されます。

がんが子宮体部にとどまっているⅠ期では単純子宮全摘出術または、準広汎子宮全摘出術に加え、卵巣、卵管の切除、リンパ節郭清を行います。さらに再発予防のために化学療法が追加されることもあります。

さらに進行したⅡ~Ⅲ期では、準広汎子宮全摘出術または広汎子宮全摘出術によって、子宮と周辺組織、卵巣、卵管などを切除。再発予防のために化学療法や放射線療法が追加されることもあります。

Ⅳ期では化学療法が中心となりますが、痛みや出血を抑えるために手術や放射線治療を行うこともあります。

また、初期の子宮体がんで、妊娠を強く希望する場合はホルモン療法と言う選択肢もあります。プロゲストロンと言うホルモンと同様の働きを持つホルモン薬を一定期間服用した後、子宮内膜を全面掻把して病理診断をします。これを数サイクル繰り返してがん細胞を取り除きます。この方法が適用出来るのはがんがⅠa期以下の初期の段階です。

気を付けなければいけないのは、妊娠の可能性を残せる代わりに再発の可能性が高くなる、というデメリットがあるということです。そのため、この療法を選択する場合は医師と十分に話し合い、納得して行う必要があります。

卵巣がんの標準治療

卵巣がんの場合、事前に細胞をとって検査することができないため、がんのタイプや進行度が確定するのは手術後になります。

そのため、卵巣がんの治療は手術療法が基本となります。両側の卵巣、卵管と子宮の摘出、大網(たいもう。胃から垂れ下がっている網状の組織)の切除、後腹膜リンパ節郭清を行います。転移が起こっている場合は腸管や脾臓を切除する場合もあります。

ただしもっとも初期のⅠa期で年齢が若く(40歳以下)、妊娠を希望している場合は、片側の卵巣と卵管、子宮を残すことも可能です。

Ⅰb期以降は、手術療法に加えて化学療法を行います。Ⅲ期以降のがんでは、抗がん剤が効くタイプのがんの場合、化学療法でがんを小さくしてから手術を行うこともあります。

卵巣がんは細かい組織型に分かれています。ですので、手術ができる場合は、手術後の検査で組織型を確定してから化学療法の計画が立てられることになります。

卵巣がんのIDS1(腫瘍減量手術)

卵巣がんの分子標的薬

がん治療と治療後の妊娠

子宮頸がんの標準治療

子宮頸がんの標準治療は、がんの進行期や組織型によって異なります。

0期~Ⅰa1期なら局所療法が可能です。膣から器具を入れて子宮頚部の一部を切除する「円錐切除術」と言う手術を行います。但し妊娠をしなくてもいい場合や円錐切除術での完治が難しい場合は、単純子宮全摘手術が適用される場合もあります。

Ⅰa2期では、子宮の周りの組織をやや広めに切除する準広範子宮全摘手術を行い、転移の可能性に備えて骨盤リンパ節の郭清を行うこともあります。

Ⅰb期~Ⅱ期では、広範子宮全摘手術で子宮と膣の一部、卵巣、卵管の摘出及び骨盤リンパ節の郭清も行います。放射線療法や化学療法が追加されることもあります。

Ⅲ期以降では、放射線療法が治療の中心となります。遠隔転移の可能性も考慮して同時に化学療法も行われます。

子宮頸がんは初期の段階では自覚症状がほとんどないか、あっても軽いものであり見過ごしてしまうことがほとんどです。しかしながら上記のような治療を考慮するならば、早期発見することはとても大切になります。そして早期発見のためには定期的に検診を受けることが大切なこととなります。

肺がんのレーザー照射治療(PDT)

肺がんのうち早期の肺門部のがんに対する治療法としてレーザー照射治療があります。

早期肺門部がんで行われるレーザー治療はPDTと言わます。Photodynamic Therapyの略であり、日本語では「光線力学的療法」と言われています。

一般的なレーザー治療は高出力のレーザーで病巣を焼切るというイメージがありますが、肺がんのPDTに使用するレーザーは非常に弱いものを使います。手をかざしても熱さを感じない程度で、レーザーメスの出力の200分の1程度の出力です。

そのような弱いレーザーでどのようにしてがんを治療するのでしょうか?

まずは腫瘍親和性光感受性物質を注射します。この物質はがんに選択的に集中する物質で、光を当てると活性化する性質を持っています。この物質ががんに集中した時にレーザー照射を行い、活性化させるのです。そしてこの物質は、活性化した状態から落ち着いた状態に戻るときに活性酸素を出します。その活性酸素ががんをやっつけるという仕組みなのです。

適用は早期の肺門部(太い気管支のあたり)がんで、大きさは1cm以内、がんの深さが3mm以内のものに有効とされています。

この手術法は開胸手術をするわけではなく、肺を切除するわけではないので、身体への負担は軽い治療法です。

但し、光感受性物質を注射しているため、手術後は日焼けしやすいので、2~3週間は直射日光を避けることになります。

PDTは1986年以降、早期の肺癌だけでなく、胃癌、食道癌、子宮頚癌に対し保険で治療がきるようになっています。

卵巣がんの分子標的薬

日本においても年々罹患者が増加している卵巣がんですが、その標準治療は手術療法が基本となり、状況に応じて化学療法を加えます。

そして卵巣がんで使用できる薬剤は何種類もありますが、主流となっている化学療法はTC療法と言って、3週間ごとにパクリタキセル(タキソール)とカルボプラチン(パラプラチン)を投与していく方法です。最近までその中に分子標的薬は含まれておりませんでした。

しかし2013年11月にアバスチンが卵巣がんに対しても承認されました。アバスチンは、もともとは大腸がんの治療などで使われている分子標的薬です。アバスチンは卵巣がんでは、従来の抗がん薬にプラスして使用します。ですので化学療法への上乗せ効果が期待できます。

さらにアバスチンと抗がん薬による治療後に、維持療法として単独で使うと、再発するまでの期間を延長することが可能です。また、アバスチンは血管新生を抑える分子標的薬です。ですから、卵巣がんで問題となる腹膜播種(あるいは胸膜播種)に特に威力を発揮するのではないかと期待されています。

尚、アバスチンは、欧州では進行期の乳がん、大腸がん、非小細胞肺がん、腎がん、卵巣がん、米国では大腸がん、非小細胞肺がん、腎がん、再発膠芽腫の適応症で承認を受けています。また、アバスチンの卵巣がん(初回治療)に係る効能・効果は、EU28カ国を含む110の国または地域において承認されています(2013年8月7日現在)。

卵巣がんのIDS(腫瘍減量手術)

卵巣がんのサブタイプ

卵巣がんのサブタイプ

卵巣がんはその組織型により、主に4つのサブタイプに分けられます。

漿液性腺がん(しょうえきせいせんがん)、粘液性腺がん(ねんえきせいせんがん)、類内膜腺がん(るいないまくせんがん)、明細胞腺がん(めいさいぼうせんがん)の4つです。これらはそれぞれに特徴があり、抗がん剤の効きやすさも異なります。

漿液性腺がんは日本人に一番多く、抗がん剤が効きやすいタイプです。

粘液性腺がんは抗がん剤が効きにくく、巨大な腫瘍を形成しやすいがんです。卵巣がんの中での頻度は低いがんですが、がんよりも悪性度の低い「境界悪性腫瘍」に分類される頻度は高いです。

類内膜腺がんは抗がん剤が効きやすいがんですが、子宮体がんに合併することがあるので注意が必要です。また、子宮内膜症から発症するケースも多いので、早期発見されることが少なくないですが、良性疾患からがん化することに注意が必要です。

明細胞線がんは、日本では漿液性腺がんに次いで多く発症し、最近さらに増える傾向にあります。卵巣がんの中では抗がん剤が効きにくいタイプです。このがんも子宮内膜症から発症するケースが多いので早期発見されることが多いのですが、類内膜性腺がんと同様に注意が必要です。

がん治療と治療後の妊娠

一昔前まではがんになったら治療が最優先で、治療後の妊娠はあきらめざるを得ませんでした。

女性のがんで、治療や年齢によって不妊になる恐れがあるのは、乳がん、子宮頸がん、子宮体がん、卵巣がん、血液がんです。乳がんでは、抗がん剤治療や長期間のホルモン薬治療の影響で、治療後に閉経したり排卵がなくなるリスクもあります。

一方で、2015年1月に厚生労働省の研究班が若年者のがんや小児がんの患者向けサイト(http://www.j-sfp.org/)を開設するなど、近年はがんの治療法に加え、生殖医療技術も進歩しているので、患者が希望すれば、可能な限り将来の妊娠を支援する動きも広がってきているようです。

また、子宮、卵巣など妊娠に直接関わる臓器のがんでは、進行度によっては子宮や卵巣を全部取らなければならないですが、ごく早期ならこれらを残せる可能性もあります。

一方で、受精卵の凍結など妊娠の可能性を残す生殖医療には公的保険が効かず、高額なのが難点となりますし、乳がんや子宮がんは治療法によっては、妊娠の可能性を残すためにがんの治療が不十分になる覚悟を強いられることもあります。

ですので、治療後の妊娠を望む方は、リスクや費用などを十分に主治医と相談してから治療法を決められたらよろしいのではないでしょうか。

妊娠を希望する人が、がんの治療前に主治医に確認しておきたいこと

  • 自分がかかったがんはどんな病気か、今の進行度で出産・子育ては可能な状態か?
  • 自分の受ける治療法とそれが卵巣に及ぼす影響は?
  • 現時点での卵巣の状態は?
  • 現在の計画では何歳で治療が終わる?
  • 妊娠の可能性を残すための選択肢とその費用は?

(出典:日経ヘルス&メディカル)

卵巣がんのIDS(腫瘍減量手術)

卵巣がんは自覚症状が出にくく、発見が遅れるケースの多いがんです。ステージのⅠかⅡで発見できれば5年生存率は非常に高いがんですが、ステージのⅢ以降になると5年生存率は50%を切ってきます。

しかしながらステージⅢ以降でも、手術と抗がん薬を組み合わせて治療していくことによって卵巣がんを取り除ける可能性もあります。そして、抗がん薬の治療を行っている途中に手術を組み合わせる場合の手術の事をIDS(腫瘍減量手術)と言います。

標準的な方法は、まず最初に手術をして腫瘍を取れるだけ取ります。その腫瘍を病理で診断し、広がりやサブタイプを見極めてから効果的な抗がん薬治療を行います。取りきれなかった腫瘍が小さくなったところで、また手術をしてがんを切除すると言うことが行われます。

また、化学療法からスタートして、効果が出てから手術を行うという方法論の検討も臨床試験を通じて進んでいます。

手術が1回であれ2回であれ、画像で見えるがんがなくなって、腫瘍マーカーが正常化すれば、初回の治療はそこで終わりです。抗がん薬を飲み続ける必要もなく、患者さんのQOLは大きく改善されます。

東大病院で行ったIDSではⅢc期以上の患者さんのうち60%の患者さんで完全切除ができ、その患者さんの5年生存率は60%以上に達しているそうです。

さらに現在は抗がん薬の投与方法も研究されています。更に、2013年11月には分子標的薬のアバスチンが卵巣がんに対して承認された事もあり、さらなる生存率の改善が期待できるのではないでしょうか。