肺がんの遺伝子治療について

遺伝子治療はいわゆる代替医療です。すなわち、科学的根拠を証明していない治療です。しかしながら証明出来ていないことと、効果の有無は別だと思っています。新しい治療法は最初はどれも科学的根拠が証明されていないのです。更に科学的根拠を証明するのには時間が必要なのです。でも証明を待っていられない患者さんがいらっしゃるのも一方の現実です。

以下の症例はある医療機関で行われた肺がんの患者さんの遺伝子治療の写真です。

66歳男性 遠隔転移無しと言う見立ての患者さんです。

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もちろん、皆さんに同じ結果が出るわけではありません。

でもこのような効果が出る方がいらっしゃるのも現実です。更に言えばこの治療は標準治療を邪魔する治療でもありませんし、副作用も少なく患者さんにとっては低侵襲な治療とのことです。

一見良い事ばかりのようですが、残念ながらこの治療は自由診療です。費用は全額自己負担ですし、治療できる施設も多くありません。更に遺伝子治療と謳ってても実施施設により治療内容も異なります。だからこそどこで治療をするのかの選択が非常に重要になるのです。

遺伝子治療に寄らず、ご質問・ご相談があればお気軽にどうぞ。

細胞ががん化するメカニズムと遺伝子治療

細胞が「がん」になってしまうのは遺伝子の異常によってであることは皆さんご存知だと思います。そのことをもう少し見ていきましょう。

ここで遺伝子に書かれていることを一冊の本にたとえて考えるとわかりやすいと思います。

まず遺伝子の異常は、紫外線や化学物質、またはウィルス由来のDNAがヒトのDNAに割り込むこと等によって生じます。しかしながら、このような遺伝子の異常が1か所に発生しただけでは通常はがんにはなりません。なぜなら1冊の本の中で1か所だけ間違いがあったとしても、本に書かれている内容に大きな変化が起きるわけではないからです。

しかし、間違いが増えてくると、だんだん文章の意味が取れなくなってしまい、最終的には内容までわからなくなってしまいます。同様に、遺伝子の異常が積み重なることによって、細胞はがん化してしまうと言うことなのです。

このことこそが、加齢とともにがんになる確率が高くなることと関係しているとみられています。すなわち年齢とともに遺伝子の異常も蓄積される可能性が高くなり、その蓄積が多くなれば本の内容までが変わってしまうということなのです。

そして、がん細胞では異常がよく見られる遺伝子があります。これらの遺伝子の多くは細胞の増殖を促す遺伝子や細胞の増殖を制御する遺伝子です。遺伝子の異常が積み重なることで増殖のアクセルが常に全開になったり、制御側のブレーキが全く効かなくなったりするのでがん細胞の増殖が制御不能になると考えられています。

そして、異常になった遺伝子を正常に戻そうとする考え方が遺伝子治療の根本となります。

ですから遺伝子治療の対象はがんだけではありませんが、がんの遺伝子治療に関しては下記をご参照してください。

乳がんの遺伝子治療について

遺伝子治療はいわゆる標準治療ではありません。しかしながら標準治療となっていないことと、効果の有無は別だと思っています。新しい治療法は最初はどれも科学的根拠が証明されていないのです。更に科学的根拠を証明するのには時間が必要です。しかしながら証明を待っていられない患者さんがいらっしゃるのも一方の現実ではないでしょうか。

以下の写真は40歳女性の方です。左乳がんの診断にて乳房温存術施行、2年経過後に再発しました。PET-CT検査の結果、左乳房内局所再発、左鎖骨上、腋窩リンパ節転移及び多発性骨転移が認められました。その後遺伝子治療を局所注射で6回施行したケースです。

頸部リンパ節転移部分

図1改2 図2改

PET検査の画像

図3改 図4改

見てお分かりのように画像に写っているがんは消失しました。もちろん時間がまだ経過していないので、この後どのような経過となるかはわかりませんし、皆さんに全く同じ結果が出るとも限りません。

しかしこのような効果が出る方が普通にいらっしゃるのも現実です。またこの治療は標準治療を邪魔する治療でもありませんし、逆に標準治療と併用することで、より大きな効果を示すともいわれています。

末期がんと言われ、標準治療でやれることが無いと言われても治療は可能です。更に副作用も少なく患者さんにとっては低侵襲な治療です。

一見良い事ばかりのようですが、残念ながらこの治療は自由診療です。費用は全額自己負担ですし、治療できる施設も限定的です。また名称は遺伝子治療と謳っていても、薬剤を含め内容は医療機関により異なります。だからこそ、どの医療機関で治療を受けるかと言う選択が非常に重要になります。

いつか科学的根拠が証明されて一般的な治療になると良いですね。

遺伝子治療に寄らず、ご質問・ご相談があればお気軽にどうぞ。

がん遺伝子治療 その2 がん抑制遺伝子

本来、人間の身体には細胞が「がん化」しないようにしたり、がん化した細胞を死滅させる「がん抑制遺伝子」が備わっています。

がん抑制遺伝子としては、ゲノムの守護神とも呼ばれるp53をはじめとして、PTEN等多くのものが確認されています。

米国の有名な女優さんがBRCA1、BRCA2の異常があるので、健康な乳房を切除したと言うニュースの記憶がある方もいらっしゃると思いますが、BRCA1、BRCA2も特定のがんのがん抑制遺伝子の一つです。

一方で肺がんや大腸がんなどの多くのがん細胞ではp53などの普遍的な「がん抑制遺伝子」が変異しているか欠損した状態となっています。そのために、がん細胞は不死となり、更に無限に増殖をして、生命を脅かすのです。

ですから、そのような状態のがん細胞に何らかの方法でp53をはじめとする正常ながん抑制遺伝子を持ち込むことが出来れば、がんの無限増殖を止め、アポトーシスへと導くことが出来ると考えられるのです。これが基本的ながんの遺伝子治療の考え方です。

しかし、どんなに良い「がん抑制遺伝子」を塔載したとしても、がん細胞に届けることが出来なければ意味がありません。つまり大切な事は、いかにしてがん細胞まで「がん抑制遺伝子」を届けるか、と言う事になるのです。言い換えれば使用しているベクター(下記「がん遺伝子治療 その1」をご参照ください)によって治療成績は大きく左右されることになるのです。もし皆さんが遺伝子治療を選択する場合には「何を使って、そしてどんながん抑制遺伝子を運ぶのか」の吟味が重要になります。

がん代替療法の注意点

がんの代替療法には、心理・精神療法、芸術療法、運動療法、温泉療法をはじめ、マッサージや鍼灸、気功、ハーブやサプリメント、健康食品など、さまざまなものが含まれます。

このような療法を取り入れる場合は、十分な情報を得たうえで、そのメリットとデメリットを良く考慮しなくてはなりません。

メリットには心理的な安心感も含まれるかもしれませんし、デメリットには安全性や費用の面も考えなくてはならないでしょう。

その上で自己責任で選択するという心構えが必要になります。また、担当の医師や看護師に、今の治療との相互作用の有無なども相談することも必要かもしれません。

また、特定の施術者から代替療法を受けるときには、方法をきちんと説明してもらい、目的や副作用について確認しておきましょう。

現在受けている医療を完全否定する場合やがんが完全に治ると主張したりする場合は注意が必要です。

また、代替療法は健康保険が適用されないので、費用が高額になることも考慮しなくてはなりません。化学療法に使う分子標的薬なども非常に高額ですが、健康保険適用であれば高額療養費制度を使えるので、自己負担はある程度抑えられます。ところが、自由診療である代替療法は全額自己負担となるので自己負担が高額となることが多いのです。

また、抗がん薬は副作用があるが、サプリメントや健康補助食品は自然の物質からできているので安心だという意見もあります。

しかし抗がん薬の中にも植物成分からつくられた植物アルカロイドと呼ばれるものが多数ありますが、副作用が無いわけではありません。つまり植物由来だから副作用がないということにはならないのです。

またサプリメントや健康補助食品には、がんの治療に効果があると「科学的に」認められたものはないと言われていることにも注意が必要です。全てのサプリや補助食品に効果がないとは私自身は思っていませんが、専門家の間では「科学的な根拠がない」が定説となっています。

代替療法を実施する場合にはこのようなことも考慮した上で選択することが必要となります。

最後になりますが、科学的根拠が証明されていなくても、遺伝子治療のように治療効果を実感する治療があるのも現実だと言う事もお伝えしておきます。

がん遺伝子治療 その1

遺伝子治療はいわゆる代替医療です。しかしながら、その治療効果を私自身が目の当たりにしているので、真っ先に皆様にお知らせしたいテーマです。しかしながら一度にお伝えすることは難しいので、これから折に触れ取り上げさせていただきたいと思います。

まずはじめに、遺伝子治療とはなんぞや?と言う事なのですが、厚生労働省の「遺伝子治療臨床研究に関する指針」によれば、「疾患の治療を目的とし、遺伝子または遺伝子を導入した細胞を人の体内に投与すこと及び遺伝子標的をいう」と定義されています。なんのことだかよくわかりませんよね?

少し、具体的な話をいたします。

国内でもいくつかの医療機関や研究機関がさまざまなベクター(運び屋の意味。遺伝子などを乗せて運ぶ乗り物と考えるとわかり易い?)を使った遺伝子治療を行っています。

すなわち、ベクターに、「がんを抑制」したり「アポトーシス(管理・調節された細胞の自殺)」させたりするようなタンパクを搭載して体内に入れるという方法です。それにより、がんの増殖を抑え、更にがん細胞が自殺することにより、がんを縮小させようという考え方です。もちろん、使用するベクターや搭載するタンパク等により治療成果は異なるので、実施する医療機関の選択は重要です。

特長としては

  1. 副作用が少ない
  2. 正常細胞に影響を与える可能性が少ない
  3. 標準治療との相性が良い
  4. 治療の適応範囲が広い(多くのがん種に適応できる)
  5. 耐性になりにくい

等があります。

逆に欠点を上げるとするならば、「あくまで自由診療となるので、治療費が全額自己負担になる」ことと、「治療施設が少ないこと」ではないでしょうか。

今回は大枠の説明をしましたが、今後は少しずつ詳しくお話ししていきたいと思います。

がん遺伝子治療 その2 がん抑制遺伝子

乳がんの遺伝子治療について

肺がんの遺伝子治療について