腎細胞がんの新たな分子標的薬カボザンチニブ

血管内皮増殖因子受容体チロシンキナーゼ阻害薬(VEGFR-TKI スーテントやヴォトリエント等)の投与経験がある進行転移性腎細胞がんに対して、腫瘍の成長・転移をもたらせる腫瘍血管の成長と主要なシグナル経路を遮断する作用を有するCabozantinib(カボザンチニブ)は、エベロリムス(アフィニトール)よりも無増悪生存期間(PFS)を約2倍に延長することが非盲検第3相臨床試験であるMETEOR試験で明らかとなりました。

METEOR試験では、分子標的薬であるカボザンチニブ(コメトリク)が、前治療歴のある進行転移性腎臓がん患者に対する標準的な二次治療と考えられてきたエベロリムス(アフィニトール)と比較されました。この試験では、増悪または死亡のリスクが42%減少し、カボザンチニブは無増悪生存期間の中央値を3.8ヵ月から7.4ヵ月とほぼ倍増させました。

主な副作用は、下痢、疲労感、吐き気、食欲減退、手足症候群などですが、サポーティブケアや用量調整で対処可能な範囲内であったようで、重篤な有害事象の発生率に両群で差は無かった模様です。

カボザンチニブは2012年に甲状腺がんの特異的タイプに対する治療薬として米国食品医薬品局(FDA)の承認を受けていますが、残念なことに日本では未承認です。

内視鏡下甲状腺がん切除術

甲状腺がんの種類は、乳頭がん、濾胞がん、髄様がん、未分化がん、悪性リンパ腫の5種類があります。このうち乳頭がんがもっとも多く、患者の90%を占めています。また患者の男女比は5:1で圧倒的に女性に多い病気です。

標準治療では、悪性リンパ腫と未分化がんは薬物療法が第一選択となり、そのほかは手術が第一選択となります。

手術では、甲状腺は頸部にあるために首の前の部分を大きく切開します。また、周囲のリンパ節も出来るだけ切除する必要があります。その為に、手術時には甲状腺の前や横にある筋肉群を切断する必要があり、手術後に筋肉を縫合します。しかし、縫合しても神経が切断されているために、筋肉が委縮し、手術跡がへこむことがあります。また、ひどい肩こりになることもあります。

これらを回避するために考え出されたのが、内視鏡下甲状腺がん切除術です。この手術では首の下の方一か所を切開して、そこから内視鏡、鉗子、超音波メスを挿入して手術します。筋肉を傷つけないように、首の皮膚のすぐ下を剥離するように行われます。

この技術は健康保険適応ではないので自費となりますが、先進医療適応です。2016年2月現在では、筑波大学付属病院をはじめとして5施設で行った場合のみ先進医療適応となります。

また適応となる甲状腺がんは、未分化がん以外の甲状腺皮膜浸潤を伴わず、画像上明らかなりンパ節腫大を伴わない甲状腺がんです。

甲状腺の乳頭がんは、他のがんに比較して進行が遅いために、手術をするか、経過観察するのか、医師の間でも意見が分かれるところです。しかし、がんを抱えたままの生活にストレスを感じるのも無視できません。内視鏡下甲状腺がん切除術は、筋肉はもちろん、がんのない片側や副甲状腺も残すことが可能になるので、術後のホルモンの補充が不要になるなど機能の温存も可能なので、一考に値するのではないでしょうか。

また同じように自費となりますが、甲状腺がんは遺伝子治療の効果が高いと言われています。手術をしたく無かったり、がんが進行してしまった場合には遺伝子治療も一考に値するのではないでしょうか。

甲状腺がんの治療-アイソトープ療法

甲状腺がんには5つのタイプがあります。乳頭がん、濾胞がん、髄様がん、未分化がん、悪性リンパ腫です。このうち日本人に圧倒的に多いのが乳頭がんで、その次が濾胞がんです。この二つで甲状腺がんの約95%を占めます。

乳頭がんと濾胞がんの一般的な治療は切除です。しかしながら、肺や骨にがんが遠隔転移している場合や、手術で取りきれたと思われる場合でも進行がんであった場合には、放射性ヨード(アイソトープ)療法を行います。

これは、乳頭がんも濾胞がんも甲状腺の濾胞細胞(甲状腺ホルモンをつくる細胞)が、がん化したものであり、この細胞には濾胞細胞が本来持っているヨードを取り込む性質が残っていることが多いことを利用したものです。

手術で甲状腺を全摘した後に、アイソトープのカプセルを服用します。そうするとアイソトープは濾胞細胞の性質が残っている転移部分に集まり、ベータ線を発して腫瘍の内部からがん細胞を破壊します。しかもベータ線は飛程が短いために、周りの組織に悪影響を与えることが少なく治療できます。

また、アイソトープ療法は濾胞がんの再発治療としても効果があります。ただし、遠隔転移の場合には大量のアイソトープが必要のため、治療の際に専用の病室に入ることになります。これはほかの方への影響を防ぐためです。

一方で、進行がんの場合の術後の微小ながん細胞をつぶす目的でのアイソトープ治療は外来でもできるようになりました。ただしこの場合でも一定の基準がありますので、担当医と相談することが必要となります。