オプジーボ(ニボルマブ)が腎がんへの適応承認へ

昨今何かと話題のオプジーボ(ニボルマブ)ですが、この度、厚生労働省の薬事・食品衛生審議会の部会は8月5日、腎臓がんの一部に使うことを承認することを了承しました。約1カ月で正式に承認され、保険適用が認められる見通しとなりました。

臨床試験段階では、前治療歴のある進行転移性腎臓がん患者に対する標準的な二次治療と考えられてきたエベロリムス(アフィニトール)と比較され、有意な差があると認められていました。

適応は手術不能か転移性の腎細胞がんとされ、患者は国内で年4500人と推定されています。

腎がんの患者さんにとっては朗報に違いないですが、重篤な副作用なども報告されています。使用には十分な注意が必要となります。

また用法・用量に関しては先に認可されている肺がんと同様であり、薬剤代が非常に高額となります。

オプジーボに関しては昨年の12月の肺がんの一部についての使用承認に続いての認可となりますが、悪性リンパ腫の一部と頭頸部がんについても承認申請が出されているので、認可が待たれるところです。

多発性骨髄腫の抗体薬(分子標的薬) ダルザレクス(一般名ダラツムマブ)

米国食品医薬品局(FDA)は、少なくとも3回の治療歴がある多発性骨髄腫患者の治療薬としてdaratumumab[ダラツムマブ](商品名Darzalex ダルザレクス)を迅速承認しました。

ダルザレクスは注射剤で、多発性骨髄腫治療を目的に承認された最初のモノクローナル抗体となりました。

ダルザレクスは、免疫システムに存在する特定の細胞のがん細胞攻撃を補助することで作用します。

ダルザレクスの安全性と有効性は2つの非盲検試験で検証されました。106人の参加者にダルザレクスを投与した1つ目の試験では、患者の29%で完全寛解あるいは部分寛解を実現し、この効果は平均7.4カ月持続した。二つ目の試験は42人の参加者にダルザレクスを投与し、患者の36%で完全寛解あるいは部分寛解を実現した。

ダルザレクスで最もよくみられた副作用は、インフュージョンリアクション(薬剤投与中または投与開始後24時間以内に現れる過敏症などの症状の総称)、疲労、嘔気、腰背部痛、発熱、咳です。ダルザレクスは、また、感染と戦う白血球数の低下(リンパ球減少症、好中球減少症、および白血球減少症)または、赤血球数の低下(貧血症)および血小板レベルの低下(血小板減少症)を引き起こす可能性もあります。

ダルザレクスは、日本でも増加傾向が見られる多発性骨髄腫の治療薬ですが、この承認はFDAの迅速承認プログラムに基づく承認であり、残念ながら日本ではまだ承認されておりません。

腎細胞がんの新たな分子標的薬カボザンチニブ

血管内皮増殖因子受容体チロシンキナーゼ阻害薬(VEGFR-TKI スーテントやヴォトリエント等)の投与経験がある進行転移性腎細胞がんに対して、腫瘍の成長・転移をもたらせる腫瘍血管の成長と主要なシグナル経路を遮断する作用を有するCabozantinib(カボザンチニブ)は、エベロリムス(アフィニトール)よりも無増悪生存期間(PFS)を約2倍に延長することが非盲検第3相臨床試験であるMETEOR試験で明らかとなりました。

METEOR試験では、分子標的薬であるカボザンチニブ(コメトリク)が、前治療歴のある進行転移性腎臓がん患者に対する標準的な二次治療と考えられてきたエベロリムス(アフィニトール)と比較されました。この試験では、増悪または死亡のリスクが42%減少し、カボザンチニブは無増悪生存期間の中央値を3.8ヵ月から7.4ヵ月とほぼ倍増させました。

主な副作用は、下痢、疲労感、吐き気、食欲減退、手足症候群などですが、サポーティブケアや用量調整で対処可能な範囲内であったようで、重篤な有害事象の発生率に両群で差は無かった模様です。

カボザンチニブは2012年に甲状腺がんの特異的タイプに対する治療薬として米国食品医薬品局(FDA)の承認を受けていますが、残念なことに日本では未承認です。

乳がんの分子標的薬アフィニトール(エベロリムス)

乳がんの治療はサブタイプ別に選択されます。サブタイプとしては分かれますが、その中で7割強を占めるのが、ホルモン受容体陽性のタイプです。

ホルモン受容体陽性の乳がんでは、女性ホルモンであるエストロゲンが、増殖因子受容体を通じてがん細胞の核にあるエストロゲン受容体に結合すると、がん細胞を増殖させるシグナルが出てしまいます。その結合をブロックするのがホルモン療法薬です。ですから、ホルモン受容体陽性の患者さんにはホルモン療法が行われます。

しかしながら治療の過程でホルモン療法薬への耐性(薬が効かなくなる)が出来てしまう事があるのが課題でした。

薬剤耐性が出来てしまう仕組みは、次のとおりです。ホルモン療法薬ががん細胞の核にあるエストロゲン受容体にエストロゲンが結合しないようにブロックすると、がん細胞は細胞の表面にあるわずかな増殖因子受容体(膜型エストロゲン受容体)の経由など、本来の増殖因子受容体を通さない迂回路を通じて増殖シグナルを受け取るようになるのです。

このような耐性を克服しようと登場したのが、分子標的薬のアフィニトール(エベロリムス)です。アフィニトールは、腎がんなどを対象に承認されていましたが、2014年に日本で「手術不能または再発乳がん」に対して承認されました。アフィニトールは、先ほどの迂回路の途中にあるmTOR(エムトール)という細胞内のタンパクに作用し、ここでがん増殖のシグナルをブロックすると言うものです。つまり増殖シグナルの迂回をさせない働きをします。

治験ではホルモン療法薬であるアロマシンとの併用で、アロマシン単独と比較して、無増悪生存期間(PFS)が大きく伸びました。

ただし、アロマシン単独と比較すると併用群では副作用も高い頻度で発生しました。代表的な副作用としては口内炎と間質性肺炎が上げられます。口内炎は2週間くらいで発生率が上昇し、その後落ち着くそうですが、間質性肺炎は1年くらいの間、発症頻度が増え続けるそうなので特に注意が必要です。

TAGRISSO(タグリッソ)-オシメルチニブが認可されました

優先審査品目として審査されていた肺がんの第三世代分子標的薬AZD9291(TAGRISSO タグリッソ)オシメルチニブが2016年2月29日に国内で認可されました。

適応は「EGFRチロシンキナーゼ阻害薬に抵抗性のEGFR T790M変異陽性の手術不能または再発非小細胞肺がん」です。

タグリッソはEGFR阻害薬による治療に耐性が生じた患者にみられる「EGFR T790M変異」という新たな遺伝子変異を標的にするものです。

イレッサやタルセバなどのEGFR-TKIが奏効しても、ほとんどの症例で薬剤に対する耐性ができ病状が進行してしまいますが、この耐性化した症例の過半数にT790M変異がみられると言われています。このT790M変異陽性の非小細胞肺がんに効果を発揮する薬剤として期待されているのが第3世代分子標的薬のタグリッソ(オシメルチニブ)です。

今まではT790M変異陽性肺がんに対する治療薬は市場になかったため、日本肺癌学会が15年7月に同剤の早期承認を厚労相に求めており、同年8月に申請し優先審査されていました。EGFR T790M変異陽性の非小細胞肺がん患者数は約1万9,700人~3万5,300人と推測されています。

使用法は1日1回経口投与で用います。またT790M変異の遺伝子変異があるかどうかを検出するため、厚労省は、同剤の承認とほぼ同時期にコンパニオン診断薬も承認する方針です。

肺がんの第三世代分子標的薬AZD9291(TAGRISSO タグリッソ)

非小細胞肺がんのうち、EGFR(上皮成長因子受容体)遺伝子に変異があるタイプのがんはEGFR-TKI(上皮成長因子受容体チロシンキナーゼ阻害薬)と呼ばれる薬剤を用いて治療が行われます。EGFR-TKIについては第一世代のイレッサやタルセバ、第二世代のジオトリフが日本では承認されています。ところが、これらの薬剤を使用して数か月から1年で「薬剤耐性」が生じて薬剤が効かなくなります。

耐性が起こるメカニズムでよく起こるのは次の2つです。

1つは、薬は結合するものの、EGFR以外の経路から増殖シグナルを伝えるようになってしまうタイプです。MET遺伝子とよばれるものが過剰に増殖し、がんの増殖シグナルを出す場合などです。

そして最も多く、EGFRの耐性を獲得した症例の50%以上に見られるのが、EGFRの遺伝子の特定の場所に遺伝子変異が起こり(主にT790M変異陽性)、薬剤が結合しなくなるタイプです。

このEGFR-TKIによる治療後に病勢が進行したT790M変異陽性の非小細胞肺がんに効果を発揮する薬剤として期待されているのが第3世代薬のAZD9291(TAGRISSO タグリッソ オシメルチニブ)です。米国では2015年11月にFDA承認をされており、国内でも優先審査品目に指定されていて、今年の3月には承認される見込みとなっています。

ただし副作用としては5~6%の患者さんに間質性肺炎が生じたようですので、注意が必要です。

この薬剤の登場により、EGFR-TKIを使用していて耐性が起きた後には、耐性の原因を特定するための再生検の重要性はますます高まっています。

FDA(米国食品医薬品局)がオプジーボ(ニボルマブ)を腎がんに承認

FDA(米国食品医薬品局)は、血管新生阻害薬による治療歴のある進行腎細胞がんの治療薬として、オプジーボ(ニボルマブ)を承認しました。

オプジーボの安全性と有効性は、血管新生阻害薬による治療中あるいはその後に病勢が進行した進行腎細胞がん患者821人を対象としたランダム化非盲険試験で実証されたました。

オプジーボ群とアフィニトール群に割り付けられ、投与開始後の平均生存期間はアフィニトール群が19.6か月に対して、オプジーボ群は25か月と延長したそうです。

日本での腎細胞がんの承認申請も済んでいるようなので、あとは承認が待たれるところです。

ただし、オプジーボ(ニボルマブ)を投与しての副作用も報告されています。中には重症の筋無力症や筋炎を発症する方もいらっしゃるようですので、使用する際には副作用もしっかりと確認・理解する必要がありそうです。

進行・再発の非小細胞肺がんに対して「オプジーボ」(ニボルマブ)が承認されました

最近何かと話題になっている、免疫チェックポイント阻害薬のオプジーボ(ニボルマブ)ですが、この12月に「切除不能な進行・再発の非小細胞肺がん」の治療に関して承認がされました。

ご存知の通り、オプジーボ(ニボルマブ)は根治切除不能な悪性黒色腫に関して承認をされていましたが、今般上記が追加となりました。

ただ、「国内での治験症例が極めて限られているため、製造販売後、一定数の症例に関わるデータが集積されるまでの間は、全症例を対象に使用成績調査を実施することにより、本剤使用患者の背景情報を把握するとともに、本剤の安全性及び有効性に関するデータを早期に収集し、本剤の適正使用に必要な措置を講じること。」とありますので、日本人に対する効果や副作用などの集積はこれからとなるようですね。実際に少しずつですが副作用の報告もされ始めているようです。中には重症の筋無力症や筋炎のような重篤な副作用の報告もあるようですので、注意は必要です。しかしながら、非常に期待の高い薬剤が承認されたことは喜ばしい事ではないでしょうか。

一方でオプジーボは薬価が非常に高いのでも有名です。「切除不能な進行・再発の非小細胞肺がん」に使用する場合は悪性黒色腫に使用する場合よりも用量・使用頻度共に多くなります。用量は1.5倍となり点滴の頻度も悪性黒色腫が3週間間隔に対して、肺がんの場合は2週間間隔となります。

その為に1回あたりの薬価が体重60kgの方で130万円以上ともなり、年間で約3,460万にもなります。もちろん、自己負担は高額療養費制度を申請することにより随分と抑えられますが、それでも高額である事は間違いがありません。

健康保険でのがん治療はそんなにお金がかからないと言う方もいらっしゃいますが、そうとも言えなくなっているのが現実ではないでしょうか。

あきらめずにがんと向き合うためにも、これからはしっかりとした準備が必要となりそうです。

乳がんの分子標的薬カドサイラについて

乳がんの20%~25%の患者さんにHER2と呼ばれるたんぱく質の過剰発現が認められます。このHER2が、がん細胞の増殖と生存期間に大きく関与しています。

かつては、HER2が過剰発現している乳がんは予後が悪いと言われていました。しかし近年、このHER2を標的とするハーセプチン(トラスツズマブ)やタイケルブ(ラパチニブ)、パージェタ(ペルツズマブ)などの分子標的薬の登場により、HER2陽性乳がんの予後が劇的に改善しました。

しかしながら、転移性乳がんで2種類以上の抗HER2薬を含むレジメンで治療が行なわれた後は、明確な治療基準が確立されていませんでした。

しかし、カドサイラ(トラスツズマブ エムタンシン、T-DM1)という薬剤により、2種類以上の抗HER2薬を含むレジメンの治療を受けた患者さんの無増悪生存期間(PFS)が大幅に延長すると言う研究報告が2013年のヨーロッパ臨床腫瘍学会(ESMO)で発表されました。

カドサイラは抗体であるハーセプチンと、がん細胞の増殖を阻害する薬剤であるエムタンシンを結合させたもので、抗体薬物複合体(ADC)と呼ばれる新しいクラスの薬に区分されます。分子標的薬であるハーセプチンを利用し、がん細胞だけに抗がん剤を送り込むため、身体の他の部位が抗がん剤にさらされるのを制限でき、副作用が軽いと言う特徴を持っています。

カドサイラはHER2陽性・進行再発乳がんに対して、2014年から日本で使えるようになっており、HER2陽性・進行再発乳がんの治療戦略は大きく変わってきています。更に、現在でもさまざまな臨床試験が行われているので、数年後には治療戦略が新たな展開を見せることが期待されています。

肺がんの新ALK阻害薬 – アレセンサ(アレクチニブ)

肺がんは組織型の違いで小細胞肺がんと非小細胞肺がんに分類されます。非小細胞肺がんが85%ほどで、更に非小細胞肺がんは扁平上皮がん、腺がん、大細胞がんに分けられます。その中でも腺がんは肺がん全体の約60%を占めますが、その腺がんの治療において大変に重要になるのが遺伝子異常の見極めです。

腺がんの20~30%でEGFR遺伝子に異常があり、5%ほどにALK(未分化リンパ腫キナーゼ)の変異が見られます。ALKで染色体の転座が起きるとALK融合遺伝子と呼ばれ、がん細胞を増殖させる元となります。ALKの遺伝子変異は、タバコを吸わない若い人の肺がんに多くみられます。

そのALK融合遺伝子を阻害することでがんの増殖を止め、腫瘍を小さくする分子標的薬としてザーコリが2012年に承認されました。奏効率も6~7割と非常に高く、無増悪生存期間(PFS)もそれまでの倍になりました。

そして2014年7月にはALKの阻害薬としては第二世代とも言われるアレセンサ(アレクチニブ)が承認されました。PFS率も非常に良好なデータが得られており、脳転移に対する効果も長く続くことが明らかになっています。更に、副作用も非常に軽いと言われています。

更に、米国の臨床試験(AF-002JG)では第一世代のザーコリ(クリゾチニブ)に抵抗性の出た47例の患者さんに対しても奏効率54.5%、寛解が1例と高い有効性が認められました。

ALK融合遺伝子陽性の頻度は非小細胞肺がんの2~5%ですが、それに対する特効薬になる可能性があるアレセンサが発売されたことは非常に喜ばしいことではないでしょうか。