日本で乳がんが増加している理由

もともと乳がんは先進国である欧米の女性に多い病気です。アメリカでは生涯のうちに乳がんにかかる方は8人に1人と言われており、日本の12人に1人と比べるとはるかに高率です。しかしながら欧米では減少傾向を示し始めているにもかかわらず、日本では1980年代以降、乳がんの罹患率は上昇し続けています。それは何故でしょうか。

日本の乳がん罹患者が増えている理由は大きく分けて二つあると言われています。

一つ目は結婚・出産年齢が高くなり、1人の女性が生涯に産む子供の数が減っていることです。というのも乳がんはエストロゲンと言う女性ホルモンの影響を受けて増殖するものが多いと考えられています。エストロゲンは排卵の準備をするときに分泌が高まります。逆に言えば妊娠や授乳中は分泌が高まりません。つまり、少子化の現代はより多くの女性が、長い期間、高いレベルのエストロゲンにさらされていることになるのです。

二つ目は食生活の変化です。すなわち日本の伝統的な和食の食事が減り、洋食やファーストフードをとる機会が増えたと言うことです。もっと解り易く言うと動物性脂肪の摂取が増えたと言う事です。もともと女性ホルモンの合成と生成には脂肪組織が関わっていますので、脂肪摂取の増加によりエストロゲンの産出量が多くなるのではないかという事です。そして閉経後の肥満は乳がんリスクを高めることも解っていますので、動物性脂肪の取りすぎによる肥満がリスクを押し上げることになります。

話は変わりますが、欧米のセレブの間では食事のときにミソスープを飲むのが密かなブームになっているらしいです。健康に良いとの考えからだそうです。増え続けているとはいえ、まだまだ欧米よりは低い日本の乳がん罹患率。和食の本家である我々も、和食の良さを見直すことによって乳がんの増加に歯止めを掛けたいですね。

高額療養費制度が変わりました

平成27年1月から高額療養費制度が変更となりました。

高額療養費制度とは、同一月(1日から月末まで)にかかった健康保険の医療費の自己負担額が高額になった場合、一定の金額(自己負担限度額)を超えた分が、あとで払い戻される制度です。

今回変更となったのは、自己負担限度額の区分と金額です。負担能力に応じた負担を求める観点から、70 歳未満の所得区分が3 区分から5 区分に細分化され、高所得者は負担が増えるようになりました。

変更内容は以下の通りです

平成26年12月診療分まで

 所得区分  自己負担限度額 多数該当
 ①区分A
(標準報酬月額53万円以上の方)
 150,000円+(総医療費-500,000円)×1%  83,400円
 ②区分B
(区分Aおよび区分C以外の方)
 80,100円+(総医療費-267,000円)×1%  44,400円
 ③区分C(低所得者)
(被保険者が市区町村民税の非課税者等)
 35,400円  24,600円

注)「区分A」に該当する場合、市区町村民税が非課税であっても、標準報酬月額での「区分A」の該当となります。

 

平成27年1月診療分から

 所得区分  自己負担限度額 多数該当
①区分ア
(標準報酬月額83万円以上の方)
 252,600円+(総医療費-842,000円)×1%  140,100円
②区分イ
(標準報酬月額53万~79万円の方)
 167,400円+(総医療費-558,000円)×1%  93,000円
③区分ウ
(標準報酬月額28万~50万円の方)
80,100円+(総医療費-267,000円)×1% 44,400円
④区分エ
(標準報酬月額26万円以下の方)
 57,600円  44,400円
⑤区分オ(低所得者)
(被保険者が市区町村民税の非課税者等)
 35,400円  24,600円

注)「区分ア」または「区分イ」に該当する場合、市区町村民税が非課税であっても、標準報酬月額での「区分ア」または「区分イ」の該当となります。(全国健康保険協会ホームページより)

また、払い戻しには一般的には申請から3か月ほどの時間がかかりますので、その点には注意が必要です。

 

胃がんの治療費と入院日数を知る

胃がんと告げられて、手術を行なう場合の医療費はいくらかかるでしょうか?おおまかに見てみましょう。

下記金額は、2010年の一般病院の症例をもとにした「治療費用+入院費用」のおおよその目安です。(もちろん差額ベッド代などの特別な料金は別途必要になりますし、2010年以降は特定機能病院は入院費が一日当たり3000円ほど割高になってます。)

そして、健康保険加入者が支払うのはこの3割ですし(高齢者で1割)、さらに高額療養費制度があるので、実際の負担の上限は一般的な方で月間で9万円位(最上位所得区分者は26万位)となります。

つまり治療費自体はかなり高額でも、個人の負担はかなり抑えられます。この点は日本の健康保険制度のすばらしい面だと思います。ただし、高額療養費制度は暦月で精算するので、複数月に跨った治療の場合は注意が必要です。

また、実際には直接的な治療費だけではなくそれ以外の費用も考えて、計画的な資金準備をするべきでしょう。

手術方法 内容 入院期間 金額
内視鏡手術 ESD(内視鏡的粘膜下層剥離術) 8日 約50万円
EMR(内視鏡的粘膜切除術) 7日 約30万円
腹腔鏡下手術 部分切除 23日 約160万円
全摘出術 28日 約210万円
開腹手術 部分切除 28日間 約170万円
全摘出術 38日間 約240万円

がんの早期発見に効果を発揮する特殊光内視鏡「NBI」

mm単位の小さいがんは、従来の内視鏡では映らないので見えないがんでした。ところが内視鏡技術を進化させた、特殊光内視鏡「NBI」(Narrow Band Imaging)が見えないがんの早期発見を可能にしました。

何故見えないものが見えるようになったのでしょうか。

がんは栄養分を引き込むために血管を新生します。しかしながらがんの芽である微細ながん細胞が引き込む新生血管は0.1mm以下と細いため、それを今までの内視鏡では発見できなかったのです。

一方、NBIは血管を流れる赤血球の成分であるヘモグロビン(小学校の理科で習いましたよね?)に吸収されやすい2つの波長の光で照らして観察するため、粘膜表層の毛細血管と粘膜微細模様が強調して表示されます。先述しましたが、がんは成長するときには新生血管を多く引き込みます。そのような状態になれば、NBIでは粘膜表層が込み入って見えるようになりますので、がんが早期発見できるのです。

特に咽頭・喉頭がん、食道がんのハイリスクグループには、このNBIが早期発見のための強力な武器になるでしょう。

食道がんの特徴と症状

食道は口と胃をつなぐ管状の臓器で消化機能を持たない食物の通り道です。

そして食道には漿膜という臓器を包む膜が無いと言う特徴があります。このため食道がんは、転移しやすいという性質があります。

食道がんは食道の真ん中か、下1/3に最も多く発生します。食道の上皮は扁平上皮で出来ているので、食道がんの90%以上が扁平上皮がんです。

喫煙、飲酒、熱い飲食物などが食道がんの発生と関係するといわれています。特にお酒とタバコの両方をたしなむ人に多く見られます。食道がんにかかると咽頭や口、喉頭などにもがんが出来やすく、一方で、咽頭や口、喉頭などにがんが出来ると、食道がんもできやすい傾向があるようです。

食道がんの症状は以下のとおりです

1.無症状・・・健康診断や人間ドック時に、無症状の食道がんの20%近くが見つかります。

2.食道がしみる感じ・・・食物を飲み込んだ時に胸の奥がチクチク痛んだり、熱いものを飲み込んだ時にしみるように感じるなどの症状が、がんの初期の頃に認められ、早期発見には重要な症状となっています。

3.食物がつかえる感じ・・・がんが大きくなると、固形の食物がつかえて異常に気が付くことになり、がんがさらに大きくなると、水も通らない状態になります。

一般的な治療方法としては、手術、内視鏡的粘膜切除術、抗がん剤治療、放射線治療となり、これらを組み合わせた集学的治療も行われます。

また放射線医学総合研究所では食道がんに対する重粒子線による臨床試験も行っていますが、臨床病期Ⅱ、Ⅲ期食道がんに対する化学療法併用術前炭素イオン線治療の第I/II相臨床試験となっています。扁平上皮がんが対象となっています。術前となっていますように手術との併用治療ですので、病巣が手術により切除できることが必要条件になります。肝臓や肺、遠隔リンパ節などに転移がある患者さんは適応外となっています。

ダヴィンチによる腎部分切除術が保険適用に

ダヴィンチサージカルシステムを用いたロボット支援による腹腔鏡下腎部分切除術が今年(2016年)4月より保険適用となりました。ロボット支援手術に対する保険適用は2012年の前立腺全摘除術に次ぎ2例目となります。

ダヴィンチサージカルシステムなどを用いたロボット支援腹腔鏡下腎部分切除術は今までは「先進医療B]として実施されていましたが、根治性(がんの断端陽性率)と腎機能温存(阻血時間25分以内)の達成率に関して、従来の腹腔鏡下手術と比較して優位に良好な結果を得ることができたために保険適用として承認されました。

また、本手術は腫瘍抑制の点でも開腹手術や従来の腹腔鏡下手術と比べて遜色がないとされます。更に従来の腹腔鏡下手術に比べてもより低侵襲ですし、操作性も非常に高いので手術が大変にやり易くなり、結果として手術の精度が高くなるので合併症のリスクも低減されます。それ故に患者さんの予後の改善やQOL(生活の質)の向上も期待できると見られています。

禁煙によるがん予防

喫煙習慣が「がん」の罹患率を上昇させる事は間違いないと言われています。では、禁煙することの効果はどれくらいあるのか少し考えてみましょう。

数年前に牛のBSE(いわゆる狂牛病騒ぎですね!)が大きく騒がれたときに、多くの方が牛肉を食べないという行動を取り、焼肉屋で閑古鳥が鳴いていた時期がありました。しかし、英国での「新変異型クロイツフェルト・ヤコブ病」患者の発生率を対策前の日本に当てはめると、当該病気の発症率は1億人当たり0.04人だそうです。さらに危険部位除去で0.0004人に減り、全頭検査で0.0003人にまで下がったそうです。つまり牛肉を食べないことによるリスク軽減はその「1億人に対して0.04人または0.0003人」を0にすることができたということなのですね。

一方、たばこはどうでしょうか?

40歳の男性喫煙者100人のうち、75歳までに何らかのがんになる人は32人と推計されています。一方で非喫煙者では20人と推計されています。つまり、禁煙によって、喫煙者のがんリスクを100人に対して12人、喫煙者1億人に対して1200万人も軽減できる事になるのですね。牛肉を食べないことによるリスク軽減と比較してなんと大きな効果でしょうか?

禁煙は費用も掛からず(それどころかお金が節約できます)、かつ非常に効果の高いがん予防法と言えるのです。

がん患者と医療者との良好なコミュニケーションの必要性

もし皆さんや皆さんのご家族ががんと診断され治療が行われるとしたら、治療中に幾度も医師の説明を聞く機会があると思います。もしそのような機会があったらどうすれば良いか考えておきましょう。

まず、現在不安に感じていること、疑問に思っていることを書き出しましょう。そして、その中でも重要と思われることを2~3点ピックアップし、それに関しメモを作っておきましょう。聞きたいことは沢山あるかもしれませんが、一度に多くを聞いても全てを消化できるとは限りませんから。

また、一番困っていることや、一番してほしいことを素直に伝えることも大切です。痛みや悩みがあれば遠慮せずに伝えましょう。

また、医師の説明を聞いていて、解らない言葉が出てきたりすることがあると思います。もし私が同席している場合であれば、患者さんやご家族が理解出来てなさそうだなと感じた時には、敢えて質問する場面もあるのですが、皆さんも遠慮せずに勇気を出して教えてもらいましょう。素直に質問すれば、通常は教えていただけます。

ただ、どのような場合にも言葉使いは丁寧に、自分の主張ばかりをするだけでなく、ちゃんと医師の話も理解するようにしましょう。

そして、出来るだけ家族や親しい人に同席を頼み、メモを取るなりしてもらいましょう。内容を後で確認できるので安心できます。ただし、どのような場合にも医師とは敵対関係にあるのではなく、一緒に病気に立ち向かっているんだと言う気持ちをご家族も含めて忘れないで下さいね。

医師とはきちんとした付き合い方をすることにより、お互いの信頼関係を築く事が大切です。医師と患者の良好な関係があってこその治療成果ではないでしょうか。(とは言え、首を傾げざるを得ないお医者様もまれにいらっしゃるのも現実ではありますが・・・)

がんは何故できるのでしょうか?

がんは何故発生するのでしょうか?

それは以前にも書きましたが、DNAの損傷の積み重ねが原因です。

ではDNAの損傷はなぜ起こるのでしょうか?それは色々な要因で生じます。例えば放射線や化学物質、ウィルス、細胞分裂時のコピーミスなどです。

しかしながらDNAの損傷が蓄積されても必ずしもがんになるわけではありません。もしDNAが損傷を受けて細胞としての機能を果たせなくなった場合、ほとんどの場合その細胞はアポトーシス(細胞の自死)するか、老化して増殖を停止したり、免疫によって排除されます。つまり、異常な細胞がはびこらないようにするブレーキの機能が人間の身体には備わっているのです。

ところがその機能が働かない性質を持ってしまった細胞が、がんとなるのです。

がん細胞はブレーキの機能が働かないので無限に増殖をし、さらにその増殖スピードは速く、免疫機能をくぐり抜けます。更にやっかいな事は、がん細胞は分化度が低いので、転移をすることができます。転移先でもがん細胞の元の性質は受け継がれるので、無限に増殖をするのです。転移前に手術で取りきることが出来ればがんは治るのですが、目に見えないような微小な転移はその時点ではわかりません。その転移したがんが検査で解るような大きさになった時に「再発」となります。(「だから早期発見は意味がない」と言った論調には私は同意をしません)今は手術前の微小な転移の有無はわからないのですから、早期発見・早期治療に越したことは無いと思います。

または遺伝子治療のようにがんの根本を変えていくような治療を実施することが必要なのではないでしょうか。

白血病の特徴と症状

白血球、赤血球、血小板などの血球成分は骨の中にある骨髄で作られます。白血病は、血球の元になる「造血幹細胞」が白血球に成長していく過程でがん化し、異常な白血球が無制限に増殖する病気です。白血病は「骨髄性」と「リンパ性」、そして「急性」と「慢性」の組み合わせにより主に4種類に分けられます。急性は進行が早いので注意が必要です。 それぞれの特徴は次のとおり

急性リンパ性白血病

リンパ球がリンパ節に流れていくまでの段階で、がん化したもの。小児白血病の代表とも言える疾患で、小児期の発祥のピークは2~6歳くらい。

急性骨髄性白血病

骨髄で未熟な造血幹細胞ががん化し、悪性化した白血病細胞が急速に増加するため、正常な血球が出来なくなるのが特徴。大人に多く見られる白血病で、日本の白血病の4割を占めます。最近では治癒の可能性が高いといわれていますが、通常の抗がん剤治療だけで根治する人は全体の半分以下というのが現状です。

慢性リンパ性白血病

慢性白血病は、病気の進行も、症状の現れ方もゆっくりしており、初期は無症状のことが多い。 成熟したリンパ球が著しく増加した状態が、慢性リンパ性白血病。成人で中年以降に多く発生します。日本では慢性リンパ性白血病は少なく、欧米の1/10程度で、年間で10万人のうち1~3人の発症率です。

慢性骨髄性白血病

慢性骨髄性白血病とは造血幹細胞の腫瘍化によって生じます。骨髄中で白血球が過度に多くつくられるようになります。2001年に新薬が登場するまでは骨髄移植を受けられなければ、ほぼ100%が7年以内に死亡してました。 そのような状況を一変させたのがグリベックと言う分子標的薬です。初期からきちんと治療すれば、罹患=死 という状況では全く無くなりました。

白血病の症状は次のとおり

1.赤血球が作られなくなると、顔色が悪くなり、疲れやすく、息切れ、動悸がおきやすい。

2.細菌やウィルスなどの感染に対して抵抗力が無くなる。

3.鼻血や皮下出血

4.脾臓の晴れによる圧迫感     などです。