食道がんの原因-バレット食道

長引く食道の病気が食道がんの素地を作ってしまう場合があります。

その病気の一つがバレット食道です。

バレット食道は食道粘膜の細胞が異常になってしまった病気です。通常の食道粘膜の扁平上皮細胞は平たい四角形をしています。これが食道炎を繰り返すうちに、酸から身を守るために円柱形に変化していき、やがて粘膜に、大きさや形の異なる細胞が入り乱れた状態になってしまうのです。バレット食道は腹部食道(胃の近く)に起こることが多く、腺がんの原因になりやすいと言われています。

では、バレット食道の原因はなんでしょうか。良く聞く、逆流性食道炎もその一つです。胃から胃酸が食道に逆流し、食道炎をおこす病気です。この病気で食道炎を繰り返すことによって上記バレット食道を引き起こすのです。

逆流性食道炎は、胃の入り口にある噴門の筋肉が緩んでくることによって発生します。筋肉の緩みは多くは加齢が原因となります。また、胃や食道の手術後にも発生しやすいものです。胸焼けや咳、のどの違和感など、症状としては軽いので市販の胃腸薬でやり過ごしてしまう場合もありますが、逆流性食道炎が疑われる方は医師の診察と定期的な検診を受けられることをおすすめします。

禁煙の肺がんリスク低減効果およびその他のメリット

巷間言われますように、喫煙による発がんリスクは高く、その中でも特に肺がんのリスクは非常に高くなります。逆に言えば、禁煙する事により、肺がんになるリスクを低減させることは大いに期待出来得ると言うことです。

しかしながら、禁煙してから肺がんのリスク低下が現れるまでに5年掛かり、禁煙後20年経過した時点でようやく非喫煙者と同等になるというデータがあります。

それをもとに出てきた意見と言うのが、「若い人は禁煙すれば肺がんリスクは下がり筋炎の効果を手にすることができるが、高齢になったら禁煙の効果を手にする前に寿命が尽きてしまうので、高齢(70代以降)になってからの禁煙はあまり意味がない」と言う論調です。

しかし禁煙による健康効果はがんに対してばかりではないのです。

米国肺協会は以下のように報告しています。

禁煙開始から20分で血圧は正常になり、8時間で血中の酸素濃度が正常になる。24時間で心筋梗塞のリスクが下がり始め、48時間で味覚や嗅覚が回復する。2週間から3か月かけて循環機能が改善され歩行が楽になります。1~9か月で咳や疲労感、息切れが改善する。

どうですか?短期間に効果が出ることも沢山あります。やはり禁煙すればしただけの効果が期待できそうですね。

肺がんの発症を防ぐためにも、肺がんを悪化させないためにも、肺機能の低下によって根治手術が不能になる状態を防ぐためにも、老後の生活をより快適に過ごせるようにするためにも、そして大切な家族のためにも、禁煙は何歳になってから初めても決して遅くはないのです。

肝がんの原因-ウィルス性肝炎

原発性の肝がんの原因はその90%が肝炎ウィルスであり、残りの10%がアルコール性やNASH(非アルコール性脂肪肝炎)などと言われています。では、その肝炎ウィルスにはどのようなものがあるのでしょうか。

ウィルス性肝炎を引き起こす肝炎ウィルスには、A型、B型、C型、D型、E型、G型、TT型があります。それぞれひきこす肝炎の経過は異なっていて、ウィルスの症状も異なっています。また、肝炎ウィルス以外でも肝炎を引き起こすウィルスがあり、EBウィルス、サイトメガロウィルス、単純ヘルペスウィルスなどがそうです。

しかしながら、これらのうちで肝がんを引き起こすウィルスはB型肝炎ウィルスとC型肝炎ウィルスです。

B型肝炎ウィルスは母子感染、性行為感染、血液感染(輸血、血液製剤、入れ墨!など)で感染し、C型肝炎ウィルスは血液感染が主な感染経路です。

B型肝炎で問題となるのはB型慢性肝炎です。3歳より小さい時期に母子感染するとウィルスが肝臓に感染した状態(キャリア)となります。この方のうちの10%位が症状を引き起こしB型の慢性肝炎となります。この慢性肝炎が進行していくと肝硬変の状態となり、肝がんへと進行していきます。

C型肝炎の場合は急性肝炎から慢性肝炎に移行する割合は60~70%であり、さらにそこから肝硬変に進行するのは20%位です。そのC型肝硬変のうちの50%前後に肝がんが発症します。

日本ではC型肝炎ウィルスから肝がんになる方が多く、冒頭の90%の内訳は75%がC型、残り15%がB型と言われています。

一方で、肝炎ウィルスの治療はハーボニーなどの薬剤による抗ウィルス療法が近年目覚ましい発展を遂げています。以前に治療をしたけど効果がなかった方も、諦めずに再度病院の門を叩いてみてはいかがでしょうか。

肝がんの原因ーアルコール性肝障害

アルコール性肝障害とは、アルコールを多量に飲むことが原因で、肝臓に障害が起こることをいいます。

しかしながら、多量に飲酒しても、一時的に飲酒するだけではアルコール性肝障害にはなりません。長い期間にわたって多量かつ継続的に飲酒することによりアルコール性肝障害は発症します。では多量で長い期間とはどれくらいを言うのでしょうか。

アルコールの量を言うときには日本酒換算を良く使います。日本酒換算で1日に3合かつ飲酒歴5年以上の人を常習飲酒家といい、1日5合以上かつ飲酒歴10年以上の方を大酒家といいます。このあたりが基準になってきそうです。

アルコールを多飲するとやがて脂肪肝になり、次にアルコール性肝炎へと進行していきます。そこから更に飲酒を続ければアルコール性肝硬変へと進行していきます。

脂肪肝やアルコール性肝炎の状態であれば、禁酒をすることで治ることが多いのですが、アルコール性肝硬変まで進行してしまうと、腹水や黄疸と言った症状が出てきて命にかかわる状態となってしまいます。

症状は脂肪肝の状態ではほとんどありませんが、アルコール性肝炎では食欲不振、吐き気、体のだるさなどが出てくることがあります。さらに進行した肝硬変になると、肝臓は小さくなり、形も凸凹になり、前述のような状態になる場合もあります。そしてこの肝硬変の状態から肝がんが出てくることがあり、注意を要します。

割合だけから言えば肝がんの原因のうちアルコールが原因となるものは少ないとはいえ、アルコール性肝硬変からの肝がんの場合は、肝機能が悪化しすぎていて治療ができないことも多々あります。ストレス発散等にアルコールもたまにならいいですが、多量かつ持続的な飲酒は慎むべきでしょう。

気を付けたい喘息に似た症状の肺がん

肺がんのほとんどは、腺がん、扁平上皮がん、小細胞肺がん、大細胞肺がんの4種類で占められています。

しかしわずかですが、この4種類の組織型に入らない特殊な肺がんもあります。

特殊な肺がんの中でも、線様嚢胞がん、粘表皮がん、カルチノイドは、早期発見・早期治療により治癒する可能性の高いがんです。

カルチノイドは形と性格からいえば小細胞肺がんに似ていますが、転移などが小細胞肺がんに比して少ない腫瘍とされています。線様嚢胞がんと粘表皮がんは、唾液腺に発生するがんと似た組織型をしているがんです。

これらのがんはいずれも気管と、太い気管支から亜区域気管支までに発生して、気管支の内腔に発育していきますが、悪性度が低いので低悪性腫瘍と呼ばれており、早期治療により治癒の可能性が高いのです。

ただし、気を付けなくてはいけないのは、これらのがんは早期には無症状である事です。更にがんが大きくなって内腔が狭くなると空気が通りにくくなるので、ゼーゼー、ヒューヒューなどの喘鳴が起こります。このことにより、気管支喘息と間違われることも多く、気管支喘息の治療をしているうちに、がんの治療が遅れてしまうことがあるのです。

しかもこれらのがんは比較的に若い人に多くみられるので、それもがんが疑われない一因になってしまうのです。

喘息やかぜの治療をしても症状が改善しない場合、一度は呼吸器科の専門医に正しく診断してもらったほうが良いのではないかと思います。

がんを防ぐための免疫力チェックポイント

ヒトの体内では毎日3,000~5,000個のがん細胞の芽がつくられていると言われています。通常は免疫による監視機構によりがん細胞が排除されるので、がんにならずに済んでいます。しかし高齢になって免疫力が低下したり、なんらかの原因で免疫力が低下するとがん細胞は監視機構を潜り抜け、増殖するようになるのです。そのような状態を防ぐにはどうすれば良いでしょうか。まずは遺伝子が傷つくのを防ぐことが大切です。次に免疫力の強化が挙げられます。

しかし、今の段階では遺伝子が傷つくのを完全に防ぐことは難しいようですし、遺伝子の老化を防ぐことも出来ないと言われています。であれば、出来てしまったがん細胞を排除するための免疫力を強化する方法はどうでしょうか。残念ながら免疫力を具体的に測る良い方法は今のところありません。しかしながらがんを防ぐためには免疫力を高めること、あるいは免疫力の低下を食い止めることが重要となりますので、免疫力のチェックポイント10項目を記載いたします。

あてはまるものが2つ以下なら免疫力は強いと言えるそうです。

  1. 眠りが浅い
  2. ヘビースモーカーである
  3. 運動不足である
  4. 休日はほとんど外出しない
  5. よく風邪をひく
  6. 疲れやすい
  7. 傷がなおりにくい
  8. ストレスを感じている
  9. 心から笑ったことがない
  10. 何事もやる気がしない

(がん予防時代 最低限、必要なこと より)

いかがですか?もし、当てはまることが多くてもあまり心配しないでくださいね。このこと自体にストレスを感じることも良くないことですから・・・。少しずつ改善していきましょう。

たばこと肺がんの関係

喫煙ががん罹患のリスクを高めることはご存知の事と思います。そのなかでも肺がん罹患のリスクはより高まります。

小細胞がんや扁平上皮がんは、特に喫煙との因果関係が深く、たばこを吸わない人はほとんどならないと言われています。

欧米の研究では、がん全体の30%、肺がんに至っては90%近くが喫煙が原因だといわれています。このことから欧米では1970年代にはじまった官民あげての禁煙活動によって、肺がんによる死亡率が減少しました。

日本でもがん対策推進基本計画で喫煙率の低下を目標としていることもあり、徐々に喫煙率が低下してきました。しかしながら、禁煙の取り組みが欧米に比較して著しく遅かったために、今なお肺がんは増加し続けています。

さらに喫煙者の肺がん死の危険度は、非喫煙者の4倍以上と言われています。1日に吸うたばこの本数×喫煙年数のことを「喫煙指数(ブリンクマン指数)」と言いますが、これが600以上の方は、肺がんの高危険度群とみなされています。また喫煙開始年齢が若かった人ほど肺がんの危険性が増加することも明らかになっています。早くから喫煙をされている方は、禁煙を考えられてはいかがでしょうか?禁煙を実行するのに遅すぎることは無いのです。

大腸がんと大腸ポリープ

皆さんの中にも何らかの健康診断を受けて「大腸にポリープがある」と言われてびっくりした方がいらっしゃるのではないでしょうか。

実際に人間ドックで大腸内視鏡検査を受けた25万人以上の集計(平均48歳)では18%の方、つまり5人に1人近くの方から大腸腺腫(一般的なポリープ)が見つかったと報告されています。

しかし、ここで注意を頂きたいのは「ポリープ=がん」では無いということです。

ポリープにはいくつかの種類があるのです。大腸の場合、大腸の粘膜から内側の管腔に飛び出したイボのようなものは、その形から全てポリープと呼ばれますが、そのポリープは大きく分けると、腫瘍とそれ以外のポリープに分けられます。

まず腫瘍以外のポリープには炎症性のポリープや過形成によるポリープがあります。これは炎症性の病気が治るときに出来たり、一種の老化現象ともいえるもので、がんとは無関係と言われています。

次に腫瘍ですが、これには良性と悪性があります。この悪性の腫瘍が「がん」です。がんと言ってもポリープ状の形をしているのは多くの場合早期のがんです。進行してしまうとイボのような突起ではなくなるので、ポリープとは言われなくなります。

良性のポリープの場合は「腺腫」と呼ばれ、大腸ポリープの80%は腺腫です。一般にポリープと言う場合はこの腺腫を指す場合が多いのですが、この腺腫はがんになる一歩手前の状態と言われています。

ただし、腺腫が全てがんになるわけではありません。腺腫の一部だけが「がん」になるのですが、がん化する一番のポイントは大きさです。腺腫の大きさが1cm以下ですとがん化率は5.6%ですが、1~2cmで28.7%、2cm以上だと65.6%となります。1cmを境に急に高くなります。しかし、ほとんどの腺腫は2~3mmの大きさにとどまっています。

このようにポリープと言っても種類があります。もしポリープがあると言われても、無用な心配をしないためにも自分のポリープがどの種類なのかを担当医に確認をしましょう。

塩分と(胃)がんの深い関係

塩分の過剰摂取は高血圧を通じて脳卒中の大きな原因と考えられていますが、他にも胃がんと深い関わりがあり、さらにはがん全般の発症とも関わっているといわれています。

ではなぜ塩分の過剰摂取で、胃がんのリスクが増加するのでしょうか。

塩分は過剰にとると刺激によって胃壁が荒れやすくなります。まず、このこと自体ががんの発生を促すと考えられます。さらに荒れた胃壁にはピロリ菌が棲みつきやすく、活動や繁殖も活発になるそうです。そしてそのピロリ菌によって、さらに胃の粘膜が荒れるという悪循環が発生します。そこでは胃壁の荒れと修復が繰り返されます。一方で身体の組織はどこであれ、荒れて修復を繰り返すほど、がん化のリスクは高まっていきます。つまり、塩分とピロリ菌がタッグを組めば胃がんのリスクが高まるのは当然なのです。

さらに荒れた粘膜からは塩分そのものが細胞に浸透しやすくなり、それにより細胞のミネラルバランスが崩れることによっても、がん全般のリスクは高まると考えられています。

もともと我々の身体にはミネラルが溶け込み一定のバランスを保っています。そのことにより正常な代謝が行われるようになっているのです。その中でも特に重要なのが、ナトリウムとカリウムのバランスだといわれています。しかし塩分(ナトリウム)の過剰摂取が続くとこのバランスの乱れを招きやすくなります。このバランスが乱れると細胞の代謝の異常につながりやすく、ひいてはがんの発症の促進につながると考えられています。

このようなことから、塩分の取りすぎは脳卒中だけではなく、がんの大きな要因にもなっていると考えられるのです。ですので、がんの食事療法で有名な「ゲルソン療法」や「甲田療法」、そのほかの多くの「がんの食事療法」では塩分の制限を行うのです。塩分は人間の身体に必要なものではありますが、何事もほどほどが肝要なようですね。

肺がんの症状

肺がんは早期のうちには症状の出にくいがんです。特に肺野型肺がんは早期のうちには、ほとんど症状が出ません。一方、肺の入り口部分の肺門部に出来る肺がんには症状があります。しかしながらその症状も肺がんに特徴的なものではありません。

肺門型肺がんは早期のうちから咳や痰がでやすく、血痰もしばしばみられます。ただし、咳や痰は肺がんに限らず、ほとんどの呼吸器の病気で最も頻繁にみられる症状で、がん特有の症状とは言えません。

ですので、咳や痰が2週間以上続く場合や、治療しても治らない場合はがんの可能性も考えて、呼吸器科の専門医に診てもらいましょう。特に肺門型肺がんの代表的ながんである扁平上皮がんは、喫煙との関係が濃厚だと言われています。煙草を吸っている人や、今は禁煙していても過去に長く煙草を吸っていた人は、症状の原因を専門医に調べてもらった方が良いと思います。

肺門型肺がんが進行すると、気管支の内壁が狭くなり、ゼーゼー、ヒューヒューと気管支ぜんそくのような症状が出てきます。さらに気管支の先への空気の出入りが悪くなるので、肺の中の空気の量が少なくなって肺がつぶれたような状態になることもあります。このような状態になると、空気の出入りが悪くなって、空気がよどんで浄化できなくなるので、ウィルスや細菌の感染が起こりやすくなります。このような結果起こった肺炎を閉塞性肺炎と言いますが、咳や痰はもちろん、発熱、胸痛なども伴うようになります。

また冒頭で記載したように、肺野型肺がんは早期のうちは症状がほとんどありません。周囲の組織に浸潤したり、転移したりして症状が出ることが多いので、早期発見のためには定期検診が必要と言う事になります。

更に肺がんは転移しやすので、転移先の臓器の症状によって、肺がんが発見されることもあります。しかしそのような状態で発見できたとしても、転移をしたがんは肺がんに限らず、治る確率が低くなってしまいます。

やはり、早期発見をするための定期的な検査と、異状を感じた時の速やかな受診行動が身を守る事に繋がります。