細胞ががん化するメカニズムと遺伝子治療

細胞が「がん」になってしまうのは遺伝子の異常によってであることは皆さんご存知だと思います。そのことをもう少し見ていきましょう。

ここで遺伝子に書かれていることを一冊の本にたとえて考えるとわかりやすいと思います。

まず遺伝子の異常は、紫外線や化学物質、またはウィルス由来のDNAがヒトのDNAに割り込むこと等によって生じます。しかしながら、このような遺伝子の異常が1か所に発生しただけでは通常はがんにはなりません。なぜなら1冊の本の中で1か所だけ間違いがあったとしても、本に書かれている内容に大きな変化が起きるわけではないからです。

しかし、間違いが増えてくると、だんだん文章の意味が取れなくなってしまい、最終的には内容までわからなくなってしまいます。同様に、遺伝子の異常が積み重なることによって、細胞はがん化してしまうと言うことなのです。

このことこそが、加齢とともにがんになる確率が高くなることと関係しているとみられています。すなわち年齢とともに遺伝子の異常も蓄積される可能性が高くなり、その蓄積が多くなれば本の内容までが変わってしまうということなのです。

そして、がん細胞では異常がよく見られる遺伝子があります。これらの遺伝子の多くは細胞の増殖を促す遺伝子や細胞の増殖を制御する遺伝子です。遺伝子の異常が積み重なることで増殖のアクセルが常に全開になったり、制御側のブレーキが全く効かなくなったりするのでがん細胞の増殖が制御不能になると考えられています。

そして、異常になった遺伝子を正常に戻そうとする考え方が遺伝子治療の根本となります。

ですから遺伝子治療の対象はがんだけではありませんが、がんの遺伝子治療に関しては下記をご参照してください。

がんを防ぐための免疫力チェックポイント

ヒトの体内では毎日3,000~5,000個のがん細胞の芽がつくられていると言われています。通常は免疫による監視機構によりがん細胞が排除されるので、がんにならずに済んでいます。しかし高齢になって免疫力が低下したり、なんらかの原因で免疫力が低下するとがん細胞は監視機構を潜り抜け、増殖するようになるのです。そのような状態を防ぐにはどうすれば良いでしょうか。まずは遺伝子が傷つくのを防ぐことが大切です。次に免疫力の強化が挙げられます。

しかし、今の段階では遺伝子が傷つくのを完全に防ぐことは難しいようですし、遺伝子の老化を防ぐことも出来ないと言われています。であれば、出来てしまったがん細胞を排除するための免疫力を強化する方法はどうでしょうか。残念ながら免疫力を具体的に測る良い方法は今のところありません。しかしながらがんを防ぐためには免疫力を高めること、あるいは免疫力の低下を食い止めることが重要となりますので、免疫力のチェックポイント10項目を記載いたします。

あてはまるものが2つ以下なら免疫力は強いと言えるそうです。

  1. 眠りが浅い
  2. ヘビースモーカーである
  3. 運動不足である
  4. 休日はほとんど外出しない
  5. よく風邪をひく
  6. 疲れやすい
  7. 傷がなおりにくい
  8. ストレスを感じている
  9. 心から笑ったことがない
  10. 何事もやる気がしない

(がん予防時代 最低限、必要なこと より)

いかがですか?もし、当てはまることが多くてもあまり心配しないでくださいね。このこと自体にストレスを感じることも良くないことですから・・・。少しずつ改善していきましょう。

肝がんの原因NASH(非アルコール性脂肪肝炎)

日本人の生活習慣の変化に伴い、脂肪肝の方が増えてきていると言われています。いまや国民の3割にも達すると言われています。

脂肪肝とは肝臓の細胞に中性脂肪がたまった状態の事を言います。脂肪肝の原因は肥満や飲酒が主な原因ですが、その中でも特にお酒を飲まない人の脂肪肝を非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)と言います。1日あたりのアルコール摂取量が20g以下であることが非アルコール性の条件と定められています。更にNAFLD(ナッフルディー)は単純性脂肪肝と進行性の非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)とに分けられます。NASHは脂肪性肝炎から肝硬変に移行し、場合によっては肝臓がんの発生に繋がるため、NAFLDの重症型と考えることができます。

NASHの原因はまだ解明されていませんが、二段階発症説というものがあります。第一段階は肥満、糖尿病、高脂血症などにより脂肪肝となり、第二段階で、酸化ストレスやサイトカインなどにより炎症が起きるというものです。いわゆるメタボリック症候群と何らかの関係がありそうです。ですので、NASHの改善に、減量が最も大切だと考えられています。食生活の改善を図り、ウォーキング等の適度な運動を心がけて下さい。

NASHになっているかどうかは、CT(コンピューター断層撮影)やエコー検査で脂肪肝の有無を調べます。そして血液検査では、肝臓の組織が壊れると値が高くなるAST、ALT、γ-GTP、線維化の程度を示す線維化マーカーと血小板数のほか、肝臓の鉄貯蔵量を示す「フェリチン」、空腹時の血中インスリンなどを調べます。ただし、確定診断には肝臓の組織検査(肝生検)を行います。

肝がんの原因はウィルスによるものが90%を占め、残り10%がアルコールやNASHによるものと言われています。つまり、NASHによる肝がんは、肝がんの発症原因の中では頻度は高くはないと言いつつも、脂肪肝には十分な注意が必要だと言えます。

たばこと肺がんの関係

喫煙ががん罹患のリスクを高めることはご存知の事と思います。そのなかでも肺がん罹患のリスクはより高まります。

小細胞がんや扁平上皮がんは、特に喫煙との因果関係が深く、たばこを吸わない人はほとんどならないと言われています。

欧米の研究では、がん全体の30%、肺がんに至っては90%近くが喫煙が原因だといわれています。このことから欧米では1970年代にはじまった官民あげての禁煙活動によって、肺がんによる死亡率が減少しました。

日本でもがん対策推進基本計画で喫煙率の低下を目標としていることもあり、徐々に喫煙率が低下してきました。しかしながら、禁煙の取り組みが欧米に比較して著しく遅かったために、今なお肺がんは増加し続けています。

さらに喫煙者の肺がん死の危険度は、非喫煙者の4倍以上と言われています。1日に吸うたばこの本数×喫煙年数のことを「喫煙指数(ブリンクマン指数)」と言いますが、これが600以上の方は、肺がんの高危険度群とみなされています。また喫煙開始年齢が若かった人ほど肺がんの危険性が増加することも明らかになっています。早くから喫煙をされている方は、禁煙を考えられてはいかがでしょうか?禁煙を実行するのに遅すぎることは無いのです。

がんの食事療法「ゲルソン療法」について

ゲルソン療法とはドイツの医者であるマックス・ゲルソン氏の開発した食事療法です。ゲルソン氏はがんを腫瘍のみとして捉えるのではなく、身体全体の栄養代謝の乱れとして捉えました。我々の身体はエネルギー代謝や基礎代謝、新陳代謝など、さまざまな代謝の集積で機能しています。そしてがん細胞が生まれる原因は細胞レベルの代謝異常であると判断したのです。

ですから腫瘍にだけ目を向けるのではなく、身体全体の栄養代謝の乱れを正せばがんは治ると思ったのです。そのために食べ物とがんの関係に焦点をあてたのです。毎日の食事の中で、がん細胞が喜ぶような栄養素を可能な限り減らし、一方で免疫力を向上させるための要素を食事療法に組み入れたのです。

しかしながら大変に厳しい食事制限で、厳格に実行するには入院でもしなければ難しいような内容です。たとえば ①完全菜食(肉、魚はもちろん、乳製品、卵、大豆製品も禁止) ②しぼりたての野菜・果物ジュースを1時間おきに13回、計2リットル以上飲む ③厳格な無塩食 ④カリウムやヨードの補給 ⑤穀物は未精白の物しか使わない(全粒粉の小麦はOKでも玄米は禁止) ⑥コーヒーによる浣腸を1日4~5回行うこと です。

当然禁酒、禁煙ですし、砂糖やきのこ、キュウリも禁止です。

ただ、大豆製品や玄米の禁止などは少し首をかしげたくもなりますし、コーヒーの浣腸は最近色々な意味で話題になっていますしね~。

また、日本では児童精神医学者の星野先生という方がご自分のがん治療体験から「星野式ゲルソン療法」を確立しています。ゲルソン療法よりは少し「やり易い」感じですが、それでも実行するには大変に強い精神力と周囲のサポートが必要であると言っておられます。

一方でゲルソン療法を実行してから体内環境が改善されるまでには時間が必要ですし、制限された食事を「大量」に摂らなくてはなりません。そういう点では末期がの方や進行の早いがん、食欲のない状態の方には不向きな治療法であるかもしれません。

肝細胞がんのリスク因子

肝細胞がんの原因としてよく知られているのは、B型肝炎ウィルスやC型肝炎ウィルスからの肝硬変です。つまり、この因子を持っている人は肝細胞がんの高危険群(発生のリスクが高い)と言えますので、定期的な検診が必要です。

また、B型肝炎ウィルスやC型肝炎ウィルスからの肝硬変ほどの高危険群とは言い切れませんが、次のような因子を持っている方は肝細胞がんになりやすいと言われています。

  • B型、C型肝炎ウィルスを持っている人
  • 両親がいずれかの肝炎である等の家族歴のある方
  • パートナーがいずれかの肝炎である方
  • C型肝炎ウィルスが発見された以前に輸血をしたことがある方
  • C型肝炎に脂肪肝を合併している方
  • 常習的に飲酒をしている方
  • 喫煙をしている方
  • メタボリックな因子を持っている方
  • 非アルコール性脂肪肝(NASH)の人
  • 肝機能悪い方

などです。このような因子を持っている方は定期的な肝臓のチェックをお勧めします。

なお、年齢や食生活、生活様式には特別な危険因子はないと言われています。

また、以前は母親がB型肝炎ウィルスを持っている場合、産道感染によりその子供がB型肝炎ウィルスに感染することがありましたが、現在では予防法が確立しており、母親から子供への感染はほとんどなくなりました。

がん予防に繋がる生活習慣の改善

糖尿病とがんの背景には共通のリスク因子として、不適切な生活習慣が関与していることは、以前にも記載しました。だとすれば生活習慣を改善すれば、糖尿病にもがんにも効果があるはずです。つまり、糖尿病の予防や改善のために生活習慣の改善に取り組むことは、将来のがんリスクを減らすことになると考えられます。

ここで生活習慣とがんの関係について改めて確認しておきましょう。

1.身体活動の影響

運動を良くする人としない人を比べると、運動を良くする人はがんが1~2割減ることが分っています。そして、結腸がん、肝臓がん、すい臓がんといった、糖尿病の人で増えるようながんが半分近くに減ります。総死亡率も約3~4割減っています。運動する人はがんになりにくいし、長生きだと言う事がはっきりしています。

2.煙草の影響

たばこを吸っている人は、がん全体のリスクが1.6倍に増えます。そして食道がんや肺がんは煙草によって大きくリスクが増えるがんですし、脳卒中や虚血性心疾患のリスクも増えてきます。たばこは生活習慣の大きな問題です。

3.お酒の影響

お酒については一番リスクが少ないのは、全く飲まない人ではなく、時々飲む人だと言われています。しかし、大量飲酒者では、がん全体のリスクは煙草と同程度増加します。そして食道がんは特にお酒が関係したがんであり、脳卒中や総死亡のリスクも高めます。

4.体型の影響

肥満も糖尿病と同じ程度にがんのリスクになります。体型とがんのリスクを見ると、肥満の人はがんが増えてきますが、やせすぎの人もがんのリスクがあります。一番リスクが少なかったのが、BMIで23~25の範囲の方だと言われています。

以上のように、運動やたばこ、お酒や食事、肥満などの生活習慣はがんのリスクに直結しています。がんも生活習慣病だと言われる所以です。ですから、これらの生活習慣を改善するだけで、がんによる死亡を大きく減らすことが期待できるのです。

未分化がんとは何か?

がん細胞の悪性度を語るときに分化、未分化と言う言葉が使われます。しかし分化・未分化って何を意味しているのでしょうか。

皆さんもご存知だと思いますが、細胞は分裂しながら増殖していきます。何度も分裂しながら次第にその組織に特有の細胞に変わる、つまり分化していくのです。胃なら胃の細胞に、前立腺なら前立腺の細胞になるということを分化したと言うのです。

一方でその途中の段階の細胞、完全に分化していない細胞も存在します。それを「未分化」の細胞と呼んでいます。未分化の中には分化度が高い(分化細胞に近い)ものから低いものまで存在します。

そして細胞ががん化した段階が、分化した段階でがん化したものを「分化がん」、未分化の段階でがん化すると「未分化がん」と呼びます。

一般にがん細胞は無制限・無秩序に分裂・増殖を繰り返します。その点は分化がんも未分化がんも変わりません。ただ、未分化の細胞はどのように成熟するか決まってませんし、どこの場所に落ち着くものなのかもわかりません。言い換えれば、分化度が低いほど、どこへでも行くことができてしまう、つまり転移が生じやすいと言うことなのです。その上、分化度が低いほど、がんは分裂・増殖のスピードが早いのも特徴です。ですので一般に分化度が低いがんほど悪性度が高いと言われるのです。

しかしながら未分化がんは放射線や化学療法が効果を増す、という側面も持ちます。なぜならば、放射線や抗がん剤は細胞の分裂・増殖過程を阻害するものであるからです。前述したように未分化がんは分裂・増殖のスピードが早いのも特徴です。すなわち分裂・増殖が多くなるので、逆に治療による分裂・増殖を阻害するチャンスが増えるのです。悪性がんにも弱点はあるのです。

膵がんの原因、慢性膵炎

慢性膵炎があるとすい臓がんを発症しやすいと言われています。また、性別では、男性に非常に多いと言う調査結果もあります。

では慢性膵炎の原因はなんでしょうか。実は膵炎の原因は慢性でも急性でも最も多いのはアルコールです。ですから、慢性膵炎の治療で最も重要なのが、断酒です。アルコール性膵炎の人はもちろんの事、そうでない場合でも飲酒を控える必要があります。

しかし、慢性膵炎を発症している人の場合は、長年の大量飲酒が習慣化しており、膵炎を発症してからも飲酒をやめられない人がしばしばいらっしゃるようです。

しかしアルコール性慢性膵炎の人の追跡調査では、禁酒成功例は腹痛消失率が高く、糖尿病合併率が低いなどの結果が出ているそうです。

以前にも何度か触れたことがありますが、糖尿病とがんは密接に関係しています。もし糖尿病が防げるのであれば、それだけでもがんリスクは低くなると考えられます。

アルコール性膵炎の方は、いったん飲み始めると適量で止められなくなることが多いので、「節酒」ではなく「断酒」が良く、その為にも家族や周りの方の協力を仰ぐことも大切です。

膵がんの危険因子

日本では膵がんと言うと、一般的には「浸潤性膵管がん」を指し、発症すると進行も早く、予後も悪いがんだと言われています。膵管から発生し、砂をまき散らすように周囲に広がっていくがんで、見つかった時には、約半数の人が切除できないと言うのが現状です。

では、そのようなすい臓がんはどのような人がなるのでしょうか。上記したように、すい臓がんは早期発見が非常に難しいがんで、見つかった時には進行しているケースが多いので、なかなか危険因子を絞り切れていません。

しかしながら、今までのいろいろな疫学的研究の結果、膵がんガイドラインでは下記のような危険因子が挙げられています。

1.家族歴

兄弟や父母、祖父母が膵臓がんを発症している場合は、やはりすい臓がんになる可能性が高い傾向にあります。また、遺伝性膵がん症候群と言って、遺伝的にがんが速くできてしまうような方もすい臓がんの発症率が高いと言われています。

2.合併疾患

合併疾患として糖尿病を持っている人は疫学的にみて糖尿病でない人よりもリスクが高いと言われています。また、肥満や慢性膵炎もリスクが高い傾向にあります。

3.喫煙

生活習慣では喫煙が独立した危険因子としてガイドラインに掲載されています。危険率は2~3倍と言われています。

見つかった時には進行していることの多いすい臓がんです。上記に心当たりのある方は、定期的な検診をされてはいかがでしょうか。