ナッツによるがん死亡リスク低下の可能性

一握りのナッツを毎日食べる人は、食べない人よりも全死亡率が20%低下することが、大規模な疫学的研究で明らかになり「New England Journal of Medicine」誌で発表されました。

この研究は食事や生活要因などの健康転帰に関する様々なデータを収集している2つの観察研究(看護師健康調査と男性医療従事者追跡調査)のデータを活用して行なわれました。

参加者は一人分(約28グラム)のナッツをどのくらいの頻度で摂取したかを答えた。30年にわたり追跡し、喫煙や運動習慣など死亡率に関与する可能性のある要因を除外する最新の分析手法が用いられました。

この結果、死亡率はナッツを食べない人に比較して、食べる頻度が週1回の人は11%、週に2~4回の人は13%、週に5~6回の人は15%、週に7回以上の人は20%低下したことが明らかになりました。

疾病別に見ると、心臓病の死亡が29%低下し、がんによる死亡リスクも11%減少したと言われています。

更にナッツを食べる習慣のある人は、ない人より細身であると言うことも報告されています。

ナッツというと一般的には木の実の事ですが、ピーナッツでも死亡率低下は同程度あるそうです。

海外での研究成果なので、そのまま我々に当てはまるかどうかはわかりませんが、一考に価する結果ではないでしょうか。

未分化がんとは何か?

がん細胞の悪性度を語るときに分化、未分化と言う言葉が使われます。しかし分化・未分化って何を意味しているのでしょうか。

皆さんもご存知だと思いますが、細胞は分裂しながら増殖していきます。何度も分裂しながら次第にその組織に特有の細胞に変わる、つまり分化していくのです。胃なら胃の細胞に、前立腺なら前立腺の細胞になるということを分化したと言うのです。

一方でその途中の段階の細胞、完全に分化していない細胞も存在します。それを「未分化」の細胞と呼んでいます。未分化の中には分化度が高い(分化細胞に近い)ものから低いものまで存在します。

そして細胞ががん化した段階が、分化した段階でがん化したものを「分化がん」、未分化の段階でがん化すると「未分化がん」と呼びます。

一般にがん細胞は無制限・無秩序に分裂・増殖を繰り返します。その点は分化がんも未分化がんも変わりません。ただ、未分化の細胞はどのように成熟するか決まってませんし、どこの場所に落ち着くものなのかもわかりません。言い換えれば、分化度が低いほど、どこへでも行くことができてしまう、つまり転移が生じやすいと言うことなのです。その上、分化度が低いほど、がんは分裂・増殖のスピードが早いのも特徴です。ですので一般に分化度が低いがんほど悪性度が高いと言われるのです。

しかしながら未分化がんは放射線や化学療法が効果を増す、という側面も持ちます。なぜならば、放射線や抗がん剤は細胞の分裂・増殖過程を阻害するものであるからです。前述したように未分化がんは分裂・増殖のスピードが早いのも特徴です。すなわち分裂・増殖が多くなるので、逆に治療による分裂・増殖を阻害するチャンスが増えるのです。悪性がんにも弱点はあるのです。

頭頸部がんの分子標的薬治療

はじめに頭頚部がんの今までの治療方法を、解説します。

まずは早期なら手術又は放射線の単独治療を選択し、この段階では単独療法で治癒する可能性が高いです。

局所進行になった場合は発声などの機能温存を希望しなければ手術、機能温存の希望があったり、手術が出来ない場合は化学放射線療法が行われました。

そして再発・転移がんになると、局所治療の適用があれば手術か化学放射線療法、そうでない場合は化学療法となっていました。

しかしながら、局所進行がん以降の化学療法と放射線の併用で重い副作用が出ることがわかっています。粘膜炎や皮膚炎、嘔吐などは放射線単独よりも化学療法併用で2倍以上現れるようです。さらに言えば化学放射線療法の合併症による死亡率は、治療関連死亡率の全体の15%にも上っています。つまりこの治療は標準治療と言えども副作用の面で問題視され、新たな治療法が望まれていました。

そこに、2012年の12月に分子標的薬のアービタックスが、頭頚部がんの治療において適応追加がされました。アービタックスは日本では2008年に大腸がんの治療薬として承認され、2010年からは一次使用が承認されてます。しかしながら欧米ではその頃から頭頚部がんにも承認され始めていました。ここにきて、日本でもようやく臨床試験を経て承認となりました。日本では頭頚部がんに対する初めての分子標的薬です。

この薬が選択肢に入ってくることにより、患者さんには大きなメリットが期待されています。局所制御期間が、放射線単独に比べ、アービタックス併用により大きく延長されています。さらに大切なことはアービタックス併用による、放射線の毒性の悪化が少ないことです。つまり、副作用が放射線単独と比較してもあまり変わらないと言うことです。さらに患者さんのQOLも悪化させないことがアンケートによりわかりました。また、再発した場合も、化学放射線治療よりも救済手術がしやすいというデータもあります。

これらのことは前述した化学療法との併用と比較すると画期的な効果ではないでしょうか。ただ単純に生存の延長だけでなく、QOLの維持も満たせる治療法が選択肢になったと言うことは、患者さんにとっても非常にすばらしい変化ではないでしょうか。

大腸がんの症状

国立がん研究センター予測では2015年に日本人に最も多くなると言われる大腸がんは、早期の場合にはほとんど自覚症状がありません。また、便潜血検査でも中々診断できません。ですので、なんらかの自覚症状が出てきた場合は、大腸がんがある程度進行している可能性が考えられます。

大腸がんがある程度進行すると、粘膜表面に潰瘍ができ出血し、便が大腸を通るときに擦られて血液が付着し、下血や血便、粘血便となって現れるのです。また、腸管が狭くなるために、便の通りが悪くなり、便秘、腹部膨満感、下痢、残便感、便が細くなる(便柱狭小)、などの便通異常を起こしたり、腹痛、腸閉塞、貧血、腹部の腫瘤などの症状が現れたりします。

これらの症状の程度や起こり方は、がんの発生部位や進行度によって差があります。

一般に、大腸の右側(盲腸、上行結腸、横行結腸)に発生したがんでは自覚症状が起こりにくく、腹部にしこりが触れたり、慢性的な貧血症状が生じるようになってから受診し、発見されることが多いとされています。

反対の大腸の左側(下行結腸、S状結腸、直腸S状部、直腸)に発生したがんでは、下血や粘血便などの出血や便秘、下痢、便が細くなるなどの症状がきっかけとなり診断されることが多くあります。

いずれにしてもこのような症状がある場合は、早めに消化器科、胃腸科、肛門科のある医療機関で検査を受けましょう。もしがんが見つかっても早期発見・早期治療につながります。大腸がんは切除できれば十分に根治可能な場合が多いのです。

膵がんの原因、慢性膵炎

慢性膵炎があるとすい臓がんを発症しやすいと言われています。また、性別では、男性に非常に多いと言う調査結果もあります。

では慢性膵炎の原因はなんでしょうか。実は膵炎の原因は慢性でも急性でも最も多いのはアルコールです。ですから、慢性膵炎の治療で最も重要なのが、断酒です。アルコール性膵炎の人はもちろんの事、そうでない場合でも飲酒を控える必要があります。

しかし、慢性膵炎を発症している人の場合は、長年の大量飲酒が習慣化しており、膵炎を発症してからも飲酒をやめられない人がしばしばいらっしゃるようです。

しかしアルコール性慢性膵炎の人の追跡調査では、禁酒成功例は腹痛消失率が高く、糖尿病合併率が低いなどの結果が出ているそうです。

以前にも何度か触れたことがありますが、糖尿病とがんは密接に関係しています。もし糖尿病が防げるのであれば、それだけでもがんリスクは低くなると考えられます。

アルコール性膵炎の方は、いったん飲み始めると適量で止められなくなることが多いので、「節酒」ではなく「断酒」が良く、その為にも家族や周りの方の協力を仰ぐことも大切です。

膵がんの危険因子

日本では膵がんと言うと、一般的には「浸潤性膵管がん」を指し、発症すると進行も早く、予後も悪いがんだと言われています。膵管から発生し、砂をまき散らすように周囲に広がっていくがんで、見つかった時には、約半数の人が切除できないと言うのが現状です。

では、そのようなすい臓がんはどのような人がなるのでしょうか。上記したように、すい臓がんは早期発見が非常に難しいがんで、見つかった時には進行しているケースが多いので、なかなか危険因子を絞り切れていません。

しかしながら、今までのいろいろな疫学的研究の結果、膵がんガイドラインでは下記のような危険因子が挙げられています。

1.家族歴

兄弟や父母、祖父母が膵臓がんを発症している場合は、やはりすい臓がんになる可能性が高い傾向にあります。また、遺伝性膵がん症候群と言って、遺伝的にがんが速くできてしまうような方もすい臓がんの発症率が高いと言われています。

2.合併疾患

合併疾患として糖尿病を持っている人は疫学的にみて糖尿病でない人よりもリスクが高いと言われています。また、肥満や慢性膵炎もリスクが高い傾向にあります。

3.喫煙

生活習慣では喫煙が独立した危険因子としてガイドラインに掲載されています。危険率は2~3倍と言われています。

見つかった時には進行していることの多いすい臓がんです。上記に心当たりのある方は、定期的な検診をされてはいかがでしょうか。

がんと糖尿病の関係その2

日本でも増加している糖尿病ですが、一般的に、糖尿病の患者の方はそうでない方よりも寿命が短いと言われています。

その差は男性で9.6歳、女性では13歳も違うそうです。

では糖尿病患者さんの死因はどうなっているのでしょうか。1980年代までは血管障害(腎障害、虚血性心疾患、脳血管障害)が1位でしたが、1990年代からは、がんが第1位になっています。これはどういうことだと思いますか?

その答えは、合併症予防の取り組みが進んだことにより血管障害で亡くなる方が減少したからだと考えられています。つまり、血管障害で亡くなる方が減少し、糖尿病患者さんが長生きになったので、がんで亡くなる方が増加しているということです。

この傾向は、今後ますます強まるのではないでしょうか。ですから糖尿病患者さんにとっては、失明したり、透析になったりする事とともに、がんになると言う事も現実的であると言う事なのです。

以前にも申し上げましたが、最近の調査では、糖尿病とがんの合併は単なる偶然では無いことが明らかになっています。日本のデータでは前立腺がん以外のがんは、糖尿病で増加するのです。(欧米でのデータも同じ傾向を示しています。

それは何故かと言うと、糖尿病とがんには共通のリスク因子があるからだと言われています。

リスク因子としては、変えられるリスク因子と変えられないリスク因子があります。

変えられないリスク因子は、「加齢」「性別」「遺伝子型」があります。糖尿病とがんは、どちらも年齢とともに増える病気で、男性の方がなりやすい。さらに特定の遺伝子型がある方は、どちらの病気にもなりやすいと言う事が分ってきています。しかし残念ながらこれらは変えようがないものです。

他方、変えられるリスク因子としては「肥満」「食事」「運動不足」「喫煙」「飲酒」といった生活習慣があります。これらの生活習慣は、糖尿病だけではなく、がんをも増やすことになるそうです。つまり、糖尿病とがんの間に直接の因果関係が無いとしても、これらのリスク因子を持っている方は、両方の病気になりやすいと言う事になるわけです。

しかし、これらは修正可能なリスク因子でもあります。つまり改善できると言う事なのです。これらのリスク因子に心当たりのある方は、生活習慣の改善をはじめては如何でしょうか?

がん代替療法の注意点

がんの代替療法には、心理・精神療法、芸術療法、運動療法、温泉療法をはじめ、マッサージや鍼灸、気功、ハーブやサプリメント、健康食品など、さまざまなものが含まれます。

このような療法を取り入れる場合は、十分な情報を得たうえで、そのメリットとデメリットを良く考慮しなくてはなりません。

メリットには心理的な安心感も含まれるかもしれませんし、デメリットには安全性や費用の面も考えなくてはならないでしょう。

その上で自己責任で選択するという心構えが必要になります。また、担当の医師や看護師に、今の治療との相互作用の有無なども相談することも必要かもしれません。

また、特定の施術者から代替療法を受けるときには、方法をきちんと説明してもらい、目的や副作用について確認しておきましょう。

現在受けている医療を完全否定する場合やがんが完全に治ると主張したりする場合は注意が必要です。

また、代替療法は健康保険が適用されないので、費用が高額になることも考慮しなくてはなりません。化学療法に使う分子標的薬なども非常に高額ですが、健康保険適用であれば高額療養費制度を使えるので、自己負担はある程度抑えられます。ところが、自由診療である代替療法は全額自己負担となるので自己負担が高額となることが多いのです。

また、抗がん薬は副作用があるが、サプリメントや健康補助食品は自然の物質からできているので安心だという意見もあります。

しかし抗がん薬の中にも植物成分からつくられた植物アルカロイドと呼ばれるものが多数ありますが、副作用が無いわけではありません。つまり植物由来だから副作用がないということにはならないのです。

またサプリメントや健康補助食品には、がんの治療に効果があると「科学的に」認められたものはないと言われていることにも注意が必要です。全てのサプリや補助食品に効果がないとは私自身は思っていませんが、専門家の間では「科学的な根拠がない」が定説となっています。

代替療法を実施する場合にはこのようなことも考慮した上で選択することが必要となります。

最後になりますが、科学的根拠が証明されていなくても、遺伝子治療のように治療効果を実感する治療があるのも現実だと言う事もお伝えしておきます。

がんと糖尿病の関係 その1

以前は、糖尿病になるとがんにならないという都市伝説?がありました。

しかしながら実際は、糖尿病患者さんはがんになりやすく、がん患者さんは糖尿病を起こしやすいと言われています。

2013年の5月に日本癌学会と日本糖尿病学会の合同委員会では「糖尿病とがんのリスクに関する報告」が発表されました。この報告によれば糖尿病がある人は無い人に比べて、全がんで1.2倍の発症リスクがあると言われています。

何故ならば、糖尿病とがん発生の間には、肥満、運動不足、喫煙、飲酒などの共通の原因もありますが、インスリン抵抗性や高血糖など、糖尿病の病態ががんを増やすリスクになると言われているからです。特に増加しやすいのは肝がんで糖尿病のない人の1.97倍のリスクであり、膵がん、大腸がん、子宮体がんと乳がんもリスク増加すると言われています。

また、もともと糖尿病があった患者さんに、がんが出来た場合の特徴的な症状として、血糖コントロールが悪化する事が多いと言えます。ですから、特に食べ過ぎてもないし運動量も以前と同じなのに血糖値が上がるなど、特別な理由もないのに血糖コントロールが悪くなる場合、その原因としてがんが隠れていることがあるので、十分な注意が必要です。

肝がんの原因NASH(非アルコール性脂肪肝炎)

がんと糖尿病の関係 その2

進行・再発膵臓がんのペプチドワクチン投与(臨床試験)

有効な治療法がないと言われている、進行・再発膵臓がんの患者さんに対するペプチドワクチンを投与する治験が行なわれています。

行なうのは札幌医科大学付属病院と東京大学医科学研究所付属病院です。(2015年7月現在、神奈川県立がんセンターも治験実施医療機関に加わっています)

サバイビン2Bと言う、がん抗原タンパク質を小さく断片化した分子(ペプチド)の一種と、「STI-01」という、インターフェロンベータ製剤を併用します。

サバイビンはがん細胞において強く発現しており、サバイビン2Bを皮下注射することによって、このペプチドが患者さんの体内でリンパ球を刺激して増加、活性化させ、がん細胞を攻撃して死滅させると考えられています。札幌医科大学での第一相試験では、約53%の症例で腫瘍の増大を抑制する効果が確認されました。

今回はその第二相の臨床試験となります。期間は「2013年10月~2016年12月」を予定しており、予定の症例数は71例です。

試験の対象者となる方は、次の項目を全て満たす方です。

  • 進行・再発膵臓がんであること
  • 腫瘍細胞にサバイビンが発現していること
  • 根治手術が不可能で標準的抗がん剤治療を受けていること
  • 過去にがんワクチンの治療を受けていないこと
  • HLA遺伝子がHLA-A*2402であること
  • 同意取得時の年齢が20~85才であること

ただし、注意しなくてはいけないのは、これはあくまで第二相の臨床試験だということです。この試験に参加される患者さんはSTEP1では、

  1. ペプチドとインターフェロン併用群
  2. ペプチド単独群
  3. プラセボ群(偽薬)

にランダムに振り分けられ、医師も患者も、自分がどの群に振り分けられたか知ることが出来ないのです。自分は治療を受けているつもりでも、実はそうでなかった場合も有り得るということなのです。それでも効果を期待できる可能性もあります。ご興味のある方は問い合わせをされてみてはいかがでしょうか。

【プレス発表】http://www.ims.u-tokyo.ac.jp/imsut/jp/files/131202.pdf#search=’SVN2B’