肺がんの分子標的薬

肺がんは表面の細胞膜から、さまざまな受容体が突き出ており、その受容体が受けた刺激により、がん細胞が増殖すると言われています。

そのような受容体のうち、肺がんの20~30%でEGFR(上皮成長因子受容体)をつかさどる遺伝子に変異があると言われています。そのEGFRに作用するように開発された分子標的薬の一つにイレッサがあります。(他の受容体を標的とする分子標的薬もあります。)イレッサは世界に先駆けて日本で承認された薬剤ですが、そのイレッサや少し後に承認されたタルセバという薬剤は第一世代と呼ばれています。それぞれ2002年と2004年に承認されおり、EGFR変異のある肺がん治療に使用されています。

そして今は第二世代、第三世代の研究が行われています。

では、新世代の薬剤は第一世代と何が違うのでしょうか。

第一世代では標的とするEGFRが特定されていますが、第二世代ではすべてのEGFRを対象として抑えると言われています。そしてEGFRに結合したら離れにくいと言う性質を持っています。そのために、第一世代よりも無増悪生存期間が長いと推測されています。

第二世代では日本ではジオトリフという薬剤が2014年5月に発売されています。

EGFR(上皮成長因子受容体)に変異を持つ患者さんのうちの約半分が、エクソン19という遺伝子の部位に欠損を持っていますが、そのエクソン19の欠損を持っている患者さんにジオトリフが良く効くことが臨床試験では明らかになっています。特に日本人の患者さんには高い効果が見られました。

さらに第二世代では変異のあるなしに関わらず、すべてのEGFRに作用していましたが、第三世代では変異のあるEGFRにだけ作用するようになっており、より効果的であると考えられています。第三世代はまだ承認薬はありませんが、いくつかの臨床試験では、副作用が今までよりも軽いのではないかと言う結果が出ているようです。また、用量を上げても副作用が出にくいために今後が有望視されています。

更に、新世代の薬剤には、イレッサなどに耐性を持ってしまったがん細胞への効果も期待されています。

この分野での開発は世界的にも積極的に取り組まれています。一日も早い新薬の承認が期待されるところです。