大腸がんの症状

国立がん研究センター予測では2015年に日本人に最も多くなると言われる大腸がんは、早期の場合にはほとんど自覚症状がありません。また、便潜血検査でも中々診断できません。ですので、なんらかの自覚症状が出てきた場合は、大腸がんがある程度進行している可能性が考えられます。

大腸がんがある程度進行すると、粘膜表面に潰瘍ができ出血し、便が大腸を通るときに擦られて血液が付着し、下血や血便、粘血便となって現れるのです。また、腸管が狭くなるために、便の通りが悪くなり、便秘、腹部膨満感、下痢、残便感、便が細くなる(便柱狭小)、などの便通異常を起こしたり、腹痛、腸閉塞、貧血、腹部の腫瘤などの症状が現れたりします。

これらの症状の程度や起こり方は、がんの発生部位や進行度によって差があります。

一般に、大腸の右側(盲腸、上行結腸、横行結腸)に発生したがんでは自覚症状が起こりにくく、腹部にしこりが触れたり、慢性的な貧血症状が生じるようになってから受診し、発見されることが多いとされています。

反対の大腸の左側(下行結腸、S状結腸、直腸S状部、直腸)に発生したがんでは、下血や粘血便などの出血や便秘、下痢、便が細くなるなどの症状がきっかけとなり診断されることが多くあります。

いずれにしてもこのような症状がある場合は、早めに消化器科、胃腸科、肛門科のある医療機関で検査を受けましょう。もしがんが見つかっても早期発見・早期治療につながります。大腸がんは切除できれば十分に根治可能な場合が多いのです。

膵がんの原因、慢性膵炎

慢性膵炎があるとすい臓がんを発症しやすいと言われています。また、性別では、男性に非常に多いと言う調査結果もあります。

では慢性膵炎の原因はなんでしょうか。実は膵炎の原因は慢性でも急性でも最も多いのはアルコールです。ですから、慢性膵炎の治療で最も重要なのが、断酒です。アルコール性膵炎の人はもちろんの事、そうでない場合でも飲酒を控える必要があります。

しかし、慢性膵炎を発症している人の場合は、長年の大量飲酒が習慣化しており、膵炎を発症してからも飲酒をやめられない人がしばしばいらっしゃるようです。

しかしアルコール性慢性膵炎の人の追跡調査では、禁酒成功例は腹痛消失率が高く、糖尿病合併率が低いなどの結果が出ているそうです。

以前にも何度か触れたことがありますが、糖尿病とがんは密接に関係しています。もし糖尿病が防げるのであれば、それだけでもがんリスクは低くなると考えられます。

アルコール性膵炎の方は、いったん飲み始めると適量で止められなくなることが多いので、「節酒」ではなく「断酒」が良く、その為にも家族や周りの方の協力を仰ぐことも大切です。

第二回「いのちのフォーラム」が開催されます。

11月15日に第二回目の「いのちのフォーラム」が開催されます。

このフォーラムは、「がん=死」ではないと言う事をテーマとしています。

二回目の今回は、がんを克服し生きる勇気と喜びを感じている元がん患者さんの体験談と、技術進歩の著しいがん治療の方法についてお伝えします。

がんと宣告されても、勇気を持ってそれに立ち向かう生き方を感じていただきたいと思います。

参加ご希望の方は、下記をご参照いただき、お電話かFAXでお申込みください。

いのちのフォーラム

膵がんの危険因子

日本では膵がんと言うと、一般的には「浸潤性膵管がん」を指し、発症すると進行も早く、予後も悪いがんだと言われています。膵管から発生し、砂をまき散らすように周囲に広がっていくがんで、見つかった時には、約半数の人が切除できないと言うのが現状です。

では、そのようなすい臓がんはどのような人がなるのでしょうか。上記したように、すい臓がんは早期発見が非常に難しいがんで、見つかった時には進行しているケースが多いので、なかなか危険因子を絞り切れていません。

しかしながら、今までのいろいろな疫学的研究の結果、膵がんガイドラインでは下記のような危険因子が挙げられています。

1.家族歴

兄弟や父母、祖父母が膵臓がんを発症している場合は、やはりすい臓がんになる可能性が高い傾向にあります。また、遺伝性膵がん症候群と言って、遺伝的にがんが速くできてしまうような方もすい臓がんの発症率が高いと言われています。

2.合併疾患

合併疾患として糖尿病を持っている人は疫学的にみて糖尿病でない人よりもリスクが高いと言われています。また、肥満や慢性膵炎もリスクが高い傾向にあります。

3.喫煙

生活習慣では喫煙が独立した危険因子としてガイドラインに掲載されています。危険率は2~3倍と言われています。

見つかった時には進行していることの多いすい臓がんです。上記に心当たりのある方は、定期的な検診をされてはいかがでしょうか。

がんと糖尿病の関係その2

日本でも増加している糖尿病ですが、一般的に、糖尿病の患者の方はそうでない方よりも寿命が短いと言われています。

その差は男性で9.6歳、女性では13歳も違うそうです。

では糖尿病患者さんの死因はどうなっているのでしょうか。1980年代までは血管障害(腎障害、虚血性心疾患、脳血管障害)が1位でしたが、1990年代からは、がんが第1位になっています。これはどういうことだと思いますか?

その答えは、合併症予防の取り組みが進んだことにより血管障害で亡くなる方が減少したからだと考えられています。つまり、血管障害で亡くなる方が減少し、糖尿病患者さんが長生きになったので、がんで亡くなる方が増加しているということです。

この傾向は、今後ますます強まるのではないでしょうか。ですから糖尿病患者さんにとっては、失明したり、透析になったりする事とともに、がんになると言う事も現実的であると言う事なのです。

以前にも申し上げましたが、最近の調査では、糖尿病とがんの合併は単なる偶然では無いことが明らかになっています。日本のデータでは前立腺がん以外のがんは、糖尿病で増加するのです。(欧米でのデータも同じ傾向を示しています。

それは何故かと言うと、糖尿病とがんには共通のリスク因子があるからだと言われています。

リスク因子としては、変えられるリスク因子と変えられないリスク因子があります。

変えられないリスク因子は、「加齢」「性別」「遺伝子型」があります。糖尿病とがんは、どちらも年齢とともに増える病気で、男性の方がなりやすい。さらに特定の遺伝子型がある方は、どちらの病気にもなりやすいと言う事が分ってきています。しかし残念ながらこれらは変えようがないものです。

他方、変えられるリスク因子としては「肥満」「食事」「運動不足」「喫煙」「飲酒」といった生活習慣があります。これらの生活習慣は、糖尿病だけではなく、がんをも増やすことになるそうです。つまり、糖尿病とがんの間に直接の因果関係が無いとしても、これらのリスク因子を持っている方は、両方の病気になりやすいと言う事になるわけです。

しかし、これらは修正可能なリスク因子でもあります。つまり改善できると言う事なのです。これらのリスク因子に心当たりのある方は、生活習慣の改善をはじめては如何でしょうか?

がん代替療法の注意点

がんの代替療法には、心理・精神療法、芸術療法、運動療法、温泉療法をはじめ、マッサージや鍼灸、気功、ハーブやサプリメント、健康食品など、さまざまなものが含まれます。

このような療法を取り入れる場合は、十分な情報を得たうえで、そのメリットとデメリットを良く考慮しなくてはなりません。

メリットには心理的な安心感も含まれるかもしれませんし、デメリットには安全性や費用の面も考えなくてはならないでしょう。

その上で自己責任で選択するという心構えが必要になります。また、担当の医師や看護師に、今の治療との相互作用の有無なども相談することも必要かもしれません。

また、特定の施術者から代替療法を受けるときには、方法をきちんと説明してもらい、目的や副作用について確認しておきましょう。

現在受けている医療を完全否定する場合やがんが完全に治ると主張したりする場合は注意が必要です。

また、代替療法は健康保険が適用されないので、費用が高額になることも考慮しなくてはなりません。化学療法に使う分子標的薬なども非常に高額ですが、健康保険適用であれば高額療養費制度を使えるので、自己負担はある程度抑えられます。ところが、自由診療である代替療法は全額自己負担となるので自己負担が高額となることが多いのです。

また、抗がん薬は副作用があるが、サプリメントや健康補助食品は自然の物質からできているので安心だという意見もあります。

しかし抗がん薬の中にも植物成分からつくられた植物アルカロイドと呼ばれるものが多数ありますが、副作用が無いわけではありません。つまり植物由来だから副作用がないということにはならないのです。

またサプリメントや健康補助食品には、がんの治療に効果があると「科学的に」認められたものはないと言われていることにも注意が必要です。全てのサプリや補助食品に効果がないとは私自身は思っていませんが、専門家の間では「科学的な根拠がない」が定説となっています。

代替療法を実施する場合にはこのようなことも考慮した上で選択することが必要となります。

最後になりますが、科学的根拠が証明されていなくても、遺伝子治療のように治療効果を実感する治療があるのも現実だと言う事もお伝えしておきます。

がんと糖尿病の関係 その1

以前は、糖尿病になるとがんにならないという都市伝説?がありました。

しかしながら実際は、糖尿病患者さんはがんになりやすく、がん患者さんは糖尿病を起こしやすいと言われています。

2013年の5月に日本癌学会と日本糖尿病学会の合同委員会では「糖尿病とがんのリスクに関する報告」が発表されました。この報告によれば糖尿病がある人は無い人に比べて、全がんで1.2倍の発症リスクがあると言われています。

何故ならば、糖尿病とがん発生の間には、肥満、運動不足、喫煙、飲酒などの共通の原因もありますが、インスリン抵抗性や高血糖など、糖尿病の病態ががんを増やすリスクになると言われているからです。特に増加しやすいのは肝がんで糖尿病のない人の1.97倍のリスクであり、膵がん、大腸がん、子宮体がんと乳がんもリスク増加すると言われています。

また、もともと糖尿病があった患者さんに、がんが出来た場合の特徴的な症状として、血糖コントロールが悪化する事が多いと言えます。ですから、特に食べ過ぎてもないし運動量も以前と同じなのに血糖値が上がるなど、特別な理由もないのに血糖コントロールが悪くなる場合、その原因としてがんが隠れていることがあるので、十分な注意が必要です。

肝がんの原因NASH(非アルコール性脂肪肝炎)

がんと糖尿病の関係 その2

進行・再発膵臓がんのペプチドワクチン投与(臨床試験)

有効な治療法がないと言われている、進行・再発膵臓がんの患者さんに対するペプチドワクチンを投与する治験が行なわれています。

行なうのは札幌医科大学付属病院と東京大学医科学研究所付属病院です。(2015年7月現在、神奈川県立がんセンターも治験実施医療機関に加わっています)

サバイビン2Bと言う、がん抗原タンパク質を小さく断片化した分子(ペプチド)の一種と、「STI-01」という、インターフェロンベータ製剤を併用します。

サバイビンはがん細胞において強く発現しており、サバイビン2Bを皮下注射することによって、このペプチドが患者さんの体内でリンパ球を刺激して増加、活性化させ、がん細胞を攻撃して死滅させると考えられています。札幌医科大学での第一相試験では、約53%の症例で腫瘍の増大を抑制する効果が確認されました。

今回はその第二相の臨床試験となります。期間は「2013年10月~2016年12月」を予定しており、予定の症例数は71例です。

試験の対象者となる方は、次の項目を全て満たす方です。

  • 進行・再発膵臓がんであること
  • 腫瘍細胞にサバイビンが発現していること
  • 根治手術が不可能で標準的抗がん剤治療を受けていること
  • 過去にがんワクチンの治療を受けていないこと
  • HLA遺伝子がHLA-A*2402であること
  • 同意取得時の年齢が20~85才であること

ただし、注意しなくてはいけないのは、これはあくまで第二相の臨床試験だということです。この試験に参加される患者さんはSTEP1では、

  1. ペプチドとインターフェロン併用群
  2. ペプチド単独群
  3. プラセボ群(偽薬)

にランダムに振り分けられ、医師も患者も、自分がどの群に振り分けられたか知ることが出来ないのです。自分は治療を受けているつもりでも、実はそうでなかった場合も有り得るということなのです。それでも効果を期待できる可能性もあります。ご興味のある方は問い合わせをされてみてはいかがでしょうか。

【プレス発表】http://www.ims.u-tokyo.ac.jp/imsut/jp/files/131202.pdf#search=’SVN2B’

卵巣がんのサブタイプ

卵巣がんはその組織型により、主に4つのサブタイプに分けられます。

漿液性腺がん(しょうえきせいせんがん)、粘液性腺がん(ねんえきせいせんがん)、類内膜腺がん(るいないまくせんがん)、明細胞腺がん(めいさいぼうせんがん)の4つです。これらはそれぞれに特徴があり、抗がん剤の効きやすさも異なります。

漿液性腺がんは日本人に一番多く、抗がん剤が効きやすいタイプです。

粘液性腺がんは抗がん剤が効きにくく、巨大な腫瘍を形成しやすいがんです。卵巣がんの中での頻度は低いがんですが、がんよりも悪性度の低い「境界悪性腫瘍」に分類される頻度は高いです。

類内膜腺がんは抗がん剤が効きやすいがんですが、子宮体がんに合併することがあるので注意が必要です。また、子宮内膜症から発症するケースも多いので、早期発見されることが少なくないですが、良性疾患からがん化することに注意が必要です。

明細胞線がんは、日本では漿液性腺がんに次いで多く発症し、最近さらに増える傾向にあります。卵巣がんの中では抗がん剤が効きにくいタイプです。このがんも子宮内膜症から発症するケースが多いので早期発見されることが多いのですが、類内膜性腺がんと同様に注意が必要です。

日本人のがん予防法とがんリスクチェック

日本人での疫学的な調査を踏まえて、国立がん研究センターがん予防・検診センターでは、日本人のためのがん予防法を提唱しています。それは次の6項目からなります。

  1. たばこは吸わない
  2. 食事はかたよらず、バランスよく
  3. 運動不足にならないように
  4. 飲酒は適度に
  5. 太りすぎない、やせすぎない
  6. 肝炎ウィルスに感染しているかを知り、感染している場合は治療する

となります。

1~5番目までは生活習慣に関する部分です。6番目は生活習慣とは関係ないのですが、肝臓がん予防の大きなポイントです。

日本人の肝臓がんの原因としてはC型肝炎ウィルスの関与が大きく、C型肝炎に感染している人が肝臓がんになるリスクは、感染していない人の36倍と言われていますので、肝炎ウィルスに感染しているかどうかは非常に大きなポイントになり、感染している場合は治療が提唱されるのです。

また、1~5番目までの健康習慣とがんの関係を見ていくと、その該当数が増えるほどがん罹患リスクが減っていくことを示したデータがあります。男女ともに、該当数が0~1個の方と比べて、5つそろっている方はがん罹患リスクが40%以上減少します。また、60歳を超えても同様の効果が見られているので、生活習慣の改善はいつから始めても遅いと言う事はないのです。

国立がん研究センターのホームページには、40歳~69歳の方に対する「がんリスクチェック」というものがあります。簡単な項目に入力していくと、今後の10年間でがんになるリスクをチェックすることができると言うものです。是非お試しください。

【がんリスクチェック】http://epi.ncc.go.jp/riskcheck/index.html