白血病の特徴と症状

白血球、赤血球、血小板などの血球成分は骨の中にある骨髄で作られます。白血病は、血球の元になる「造血幹細胞」が白血球に成長していく過程でがん化し、異常な白血球が無制限に増殖する病気です。白血病は「骨髄性」と「リンパ性」、そして「急性」と「慢性」の組み合わせにより主に4種類に分けられます。急性は進行が早いので注意が必要です。 それぞれの特徴は次のとおり

急性リンパ性白血病

リンパ球がリンパ節に流れていくまでの段階で、がん化したもの。小児白血病の代表とも言える疾患で、小児期の発祥のピークは2~6歳くらい。

急性骨髄性白血病

骨髄で未熟な造血幹細胞ががん化し、悪性化した白血病細胞が急速に増加するため、正常な血球が出来なくなるのが特徴。大人に多く見られる白血病で、日本の白血病の4割を占めます。最近では治癒の可能性が高いといわれていますが、通常の抗がん剤治療だけで根治する人は全体の半分以下というのが現状です。

慢性リンパ性白血病

慢性白血病は、病気の進行も、症状の現れ方もゆっくりしており、初期は無症状のことが多い。 成熟したリンパ球が著しく増加した状態が、慢性リンパ性白血病。成人で中年以降に多く発生します。日本では慢性リンパ性白血病は少なく、欧米の1/10程度で、年間で10万人のうち1~3人の発症率です。

慢性骨髄性白血病

慢性骨髄性白血病とは造血幹細胞の腫瘍化によって生じます。骨髄中で白血球が過度に多くつくられるようになります。2001年に新薬が登場するまでは骨髄移植を受けられなければ、ほぼ100%が7年以内に死亡してました。 そのような状況を一変させたのがグリベックと言う分子標的薬です。初期からきちんと治療すれば、罹患=死 という状況では全く無くなりました。

白血病の症状は次のとおり

1.赤血球が作られなくなると、顔色が悪くなり、疲れやすく、息切れ、動悸がおきやすい。

2.細菌やウィルスなどの感染に対して抵抗力が無くなる。

3.鼻血や皮下出血

4.脾臓の晴れによる圧迫感     などです。

多発性骨髄腫の抗体薬(分子標的薬) ダルザレクス(一般名ダラツムマブ)

米国食品医薬品局(FDA)は、少なくとも3回の治療歴がある多発性骨髄腫患者の治療薬としてdaratumumab[ダラツムマブ](商品名Darzalex ダルザレクス)を迅速承認しました。

ダルザレクスは注射剤で、多発性骨髄腫治療を目的に承認された最初のモノクローナル抗体となりました。

ダルザレクスは、免疫システムに存在する特定の細胞のがん細胞攻撃を補助することで作用します。

ダルザレクスの安全性と有効性は2つの非盲検試験で検証されました。106人の参加者にダルザレクスを投与した1つ目の試験では、患者の29%で完全寛解あるいは部分寛解を実現し、この効果は平均7.4カ月持続した。二つ目の試験は42人の参加者にダルザレクスを投与し、患者の36%で完全寛解あるいは部分寛解を実現した。

ダルザレクスで最もよくみられた副作用は、インフュージョンリアクション(薬剤投与中または投与開始後24時間以内に現れる過敏症などの症状の総称)、疲労、嘔気、腰背部痛、発熱、咳です。ダルザレクスは、また、感染と戦う白血球数の低下(リンパ球減少症、好中球減少症、および白血球減少症)または、赤血球数の低下(貧血症)および血小板レベルの低下(血小板減少症)を引き起こす可能性もあります。

ダルザレクスは、日本でも増加傾向が見られる多発性骨髄腫の治療薬ですが、この承認はFDAの迅速承認プログラムに基づく承認であり、残念ながら日本ではまだ承認されておりません。

多発性骨髄腫の特徴と症状

多発性骨髄腫は、男性に多く発生する高齢者の病気で、発症の平均年齢は70歳代で、主に50歳代以降に多く発症します。日本での発症頻度は人口10万人に対して3~4人程度ですが、高齢化社会の到来と共に患者数の増加傾向がはっきりしてきています。

多発性骨髄腫は骨髄中のリンパ球が分化した細胞「形質細胞」が腫瘍化した病気です。形質細胞とは抗体(細菌などの抗原に結合し中和などをする)を作る細胞で、細菌や異物を攻撃する役割を担ってますが、多発性骨髄腫になると正常な抗体ではなく、異常な抗体が産出されます。

この異常な抗体には身体を守る機能はほとんどありません。多発性骨髄腫は、骨病変(こつびょうへん)を伴いやすいため、腰痛や骨折などの骨の症状で発見されることがしばしばあります。

また、治療面においては新薬でも十分な治療効果を得られない患者さんや再発を繰り返す患者さんが多いことも特徴ですが、しかしながら新薬の登場によって完全寛解にいたる患者さんも増えています。

症状は次のようなものがあります。

1.貧血

2.骨痛、骨折、高カルシュウム血症

3.腎不全   など

悪性リンパ腫

成熟したリンパ球はリンパ節に移動します。悪性リンパ腫は、このリンパ節に到達したリンパ球が異常増殖する病気で、リンパ節のがんと考えられます。身体の表面のリンパ節や身体の奥のリンパ節がが腫れる事もあり、時には色々な内臓に入り込んだり、血液の中に流れ込んだりすることもあります。悪性リンパ腫の患者さんは白血病の患者さんの2倍以上と言われており、血液腫瘍の中では頻度の高い病気です。高齢者に多いですが若年層でも発症することもあり、現在は微増しています。

また悪性リンパ腫は大きく分けると、腫瘍を構成する組織型により、ホジキンリンパ腫と非ホジキンリンパ腫に分類されます。さらに細かく病理学的に分類されますが、それは治療法を選択するための重要な手掛かりとなります。日本ではホジキンリンパ腫は約1割で、9割が非ホジキンリンパ腫です。(欧米では約3割がホジキンリンパ腫です。)

ホジキンリンパ腫は主に首やわきの下や胸の縦隔などにあるリンパ節から発生します。

一方、非ホジキンリンパ腫はリンパ節から発生する人が半分。残りは胃腸、肝臓、すい臓、乳腺、卵巣、どこにでもできます。 できた場所により症状もまちまちです。胃に出来れば胃潰瘍のような症状がでますが、それゆえに他の病気と間違われやすく、診断が遅れたり、適切な治療が施されない場合もあるので注意が必要です。

悪性リンパ腫は化学療法の効果が高いがんですが、根治になりにくいタイプや使用できる薬剤が限定されているタイプもあります。現在も新薬の開発がされていますので、一刻も早い登場が期待されます。

また、遺伝子治療で非常に大きな効果がある患者さんもいらっしゃいますので、それも選択肢の一つに入るのではないでしょうか。

がん治療と治療後の妊娠

一昔前まではがんになったら治療が最優先で、治療後の妊娠はあきらめざるを得ませんでした。

女性のがんで、治療や年齢によって不妊になる恐れがあるのは、乳がん、子宮頸がん、子宮体がん、卵巣がん、血液がんです。乳がんでは、抗がん剤治療や長期間のホルモン薬治療の影響で、治療後に閉経したり排卵がなくなるリスクもあります。

一方で、2015年1月に厚生労働省の研究班が若年者のがんや小児がんの患者向けサイト(http://www.j-sfp.org/)を開設するなど、近年はがんの治療法に加え、生殖医療技術も進歩しているので、患者が希望すれば、可能な限り将来の妊娠を支援する動きも広がってきているようです。

また、子宮、卵巣など妊娠に直接関わる臓器のがんでは、進行度によっては子宮や卵巣を全部取らなければならないですが、ごく早期ならこれらを残せる可能性もあります。

一方で、受精卵の凍結など妊娠の可能性を残す生殖医療には公的保険が効かず、高額なのが難点となりますし、乳がんや子宮がんは治療法によっては、妊娠の可能性を残すためにがんの治療が不十分になる覚悟を強いられることもあります。

ですので、治療後の妊娠を望む方は、リスクや費用などを十分に主治医と相談してから治療法を決められたらよろしいのではないでしょうか。

妊娠を希望する人が、がんの治療前に主治医に確認しておきたいこと

  • 自分がかかったがんはどんな病気か、今の進行度で出産・子育ては可能な状態か?
  • 自分の受ける治療法とそれが卵巣に及ぼす影響は?
  • 現時点での卵巣の状態は?
  • 現在の計画では何歳で治療が終わる?
  • 妊娠の可能性を残すための選択肢とその費用は?

(出典:日経ヘルス&メディカル)