大腸がんの職場復帰までの目安

大腸がんの治療後、まずは退院するまでの日数のおおよその目安は次の通りです。

内視鏡治療・・・2~3日

腹腔鏡手術・・・7~8日

開腹手術・・・・10~14日(合併症がなく、経過が順調ならば)

しかしながら、治療の内容や年齢、体力によっても変わってきますので、これ以上の日数が必要な場合もあることもご理解しておいてください。

また、退院したからと言ってすぐに仕事に復帰できるわけではありません。

退院後にいつまで自宅療養しないといけないのか、いつから仕事に復帰できるかと言うことも個人差があります。

退院後1週間位は安静を保った後、順調に回復しているようであれば、徐々に散歩などの軽い運動を行いながら身体を慣らしていくようにします。

そのような経過ののち、合併症がなく、経過が順調ならば

軽作業やデスクワークが中心の仕事・・・1か月くらい

腹筋を使ったりする力仕事・・・・・・・2~3か月後

で仕事に復帰できることが多いようです。

しかし、目安はあくまで目安です。あまり職場復帰を焦ること無く、家族や職場の人などの周囲の人達の協力を得ながら、そして担当医とも良く相談して、無理のないスケジュールをきめていきましょう。

また、職場に産業医が居るなら復帰前に面会して状況を伝え、困った時には相談に乗ってもらえるようにしておくことも良いと思います。

大腸ステント治療

切除不能肝転移大腸がんへのラジオ波焼灼療法の有効性

大腸がんと大腸ポリープ

皆さんの中にも何らかの健康診断を受けて「大腸にポリープがある」と言われてびっくりした方がいらっしゃるのではないでしょうか。

実際に人間ドックで大腸内視鏡検査を受けた25万人以上の集計(平均48歳)では18%の方、つまり5人に1人近くの方から大腸腺腫(一般的なポリープ)が見つかったと報告されています。

しかし、ここで注意を頂きたいのは「ポリープ=がん」では無いということです。

ポリープにはいくつかの種類があるのです。大腸の場合、大腸の粘膜から内側の管腔に飛び出したイボのようなものは、その形から全てポリープと呼ばれますが、そのポリープは大きく分けると、腫瘍とそれ以外のポリープに分けられます。

まず腫瘍以外のポリープには炎症性のポリープや過形成によるポリープがあります。これは炎症性の病気が治るときに出来たり、一種の老化現象ともいえるもので、がんとは無関係と言われています。

次に腫瘍ですが、これには良性と悪性があります。この悪性の腫瘍が「がん」です。がんと言ってもポリープ状の形をしているのは多くの場合早期のがんです。進行してしまうとイボのような突起ではなくなるので、ポリープとは言われなくなります。

良性のポリープの場合は「腺腫」と呼ばれ、大腸ポリープの80%は腺腫です。一般にポリープと言う場合はこの腺腫を指す場合が多いのですが、この腺腫はがんになる一歩手前の状態と言われています。

ただし、腺腫が全てがんになるわけではありません。腺腫の一部だけが「がん」になるのですが、がん化する一番のポイントは大きさです。腺腫の大きさが1cm以下ですとがん化率は5.6%ですが、1~2cmで28.7%、2cm以上だと65.6%となります。1cmを境に急に高くなります。しかし、ほとんどの腺腫は2~3mmの大きさにとどまっています。

このようにポリープと言っても種類があります。もしポリープがあると言われても、無用な心配をしないためにも自分のポリープがどの種類なのかを担当医に確認をしましょう。

大腸がんの再発・転移率と検診の必要性

がんの原発巣(最初に出来たがん病変)を手術治療で切除して、しばらく経過してから再びがんが現れることを再発と言います。再発の中でも、がん細胞が元あった原発巣から離れた場所(ほかの臓器や組織)に飛び火し、その部位で増殖するのが転移です・

国立がん研究センターの予測では、2015年日本人の男女合計で最も罹患者数が多くなるとされる大腸がんですが、大腸がんの再発・転移が起こる割合はほかのがんと比べて高くはなく、大腸がん全体では再発率は約17%と言われています。しかし実際には最初に発見されたがんの進行度や発生部位(結腸がんか直腸がんか)によっても異なります。

大腸がんの再発は、その再発のうちの約80%が3年以内に起こり、95%が5年以内に見つけられています。5年経過後に再発する割合は非常に少ないと言えます。そして、再発も症状があらわれて発見されるケースよりも、定期的な検診によって発見されるケースが多くなっています。また、再発率は結腸がんよりも直腸がんの方が高いことにも注意が必要です。

以上のような事からも、治療後5年間は定期的な検診が必要とされているのです。

大腸がんのステージ別再発率と手術後の経過年数別累積再発出現率は以下の通りです。

ステージ 再発率(%) 手術後の経過年数別累積再発出現率(%)
3年以内 4年以内 5年以内
     Ⅰ 3.7 68.6 82.4 96.1
     Ⅱ 13.3 76.9 88.2 92.9
     Ⅲ 30.8 87 93.8 97.8
    全体 17.3 83.2 91.6 96.4
大腸がん研究会・プロジェクト研究1991-1996年症例より

大腸がんの症状

国立がん研究センター予測では2015年に日本人に最も多くなると言われる大腸がんは、早期の場合にはほとんど自覚症状がありません。また、便潜血検査でも中々診断できません。ですので、なんらかの自覚症状が出てきた場合は、大腸がんがある程度進行している可能性が考えられます。

大腸がんがある程度進行すると、粘膜表面に潰瘍ができ出血し、便が大腸を通るときに擦られて血液が付着し、下血や血便、粘血便となって現れるのです。また、腸管が狭くなるために、便の通りが悪くなり、便秘、腹部膨満感、下痢、残便感、便が細くなる(便柱狭小)、などの便通異常を起こしたり、腹痛、腸閉塞、貧血、腹部の腫瘤などの症状が現れたりします。

これらの症状の程度や起こり方は、がんの発生部位や進行度によって差があります。

一般に、大腸の右側(盲腸、上行結腸、横行結腸)に発生したがんでは自覚症状が起こりにくく、腹部にしこりが触れたり、慢性的な貧血症状が生じるようになってから受診し、発見されることが多いとされています。

反対の大腸の左側(下行結腸、S状結腸、直腸S状部、直腸)に発生したがんでは、下血や粘血便などの出血や便秘、下痢、便が細くなるなどの症状がきっかけとなり診断されることが多くあります。

いずれにしてもこのような症状がある場合は、早めに消化器科、胃腸科、肛門科のある医療機関で検査を受けましょう。もしがんが見つかっても早期発見・早期治療につながります。大腸がんは切除できれば十分に根治可能な場合が多いのです。

食生活と大腸がん

従来、「大腸がん」は欧米で多いがんと言われていましたが、近年では日本でも急増しています。

国立がんセンターが予測する2015年日本のがん罹患者数では男女合わせると2014年の胃がんを抜き、大腸がんがトップとなっています。その人数は、予測では135,800人となっており、過去40年間で5~6倍の増加となっています。(性別毎では男性のトップは前立腺がん、女性のトップは乳がんです)

何故、大腸がんが急増しているのでしょうか?その一因は日本人の食生活が欧米化したことだと言われています。

実際に、アメリカへ移住した日本人の「大腸がん」発生率が白人並みに上がってしまったことや、菜食主義者や肉類や動物性脂肪の摂取量の少ない国や地域では、「大腸がん」の発生率は低い傾向にあることなども報告されています。(日本も過去はそうでした)

更に「大腸がん」のリスクは、保存・加工肉の摂取量の多い人達の方が高くなることも確認されていますが、これは動物性脂肪による細胞分裂促進作用や、動物性タンパクの加熱により生成される発がん性物質などによるものではないかと考えられています。また肥満やアルコールの摂取も、「大腸がん」の発生リスクを高めることが確認されています。

つまり、今や日本人に最も多くなってしまった「大腸がん」を予防するには、アルコールの摂取量を減らすとともに、保存・加工肉の摂取量を少なくし、更に肥満に注意することが重要となります。また十分な野菜の摂取、定期的な運動も大切なこととなります。

大腸がんは早期発見すれば怖いがんでは無いとは言われていますが、罹患しないに越したことは無いのではないでしょうか。

切除不能肝転移大腸がんへのラジオ波焼灼療法の有効性

2015年米国臨床腫瘍学会学術集会(ASCO2015)において、切除不能肝転移大腸がんの治療で、ラジオ波焼灼療法の併用が生存率を改善すると報告がありました。

これは切除不能の肝転移性大腸がんに関して、「化学療法単独の治療」と「化学療法とラジオ波焼灼療法の併用治療」を比較した第Ⅱ相試験での結果で示されました。

化学療法は6か月のFOLFOX療法※の後にアバスチン(ベバシズマブ)の追加投与が行われると言う形で実施されています。

追跡期間中央値9.7年間後の結果報告では、無増悪生存期間(PFS)の中央値が化学療法単独群が9.92か月に対して併用群は16.82か月、また全生存期間中央値は単独群が40.54か月に対して併用群が45.6か月と、両郡間に有意差が認められたと報告されています。

※FOLFOX療法:フォリン酸(FOLinic acid)・フルオロウラシル(Fluorouracil)・オキサリプラチン(OXaliplatin)の3剤併用による化学療法を意味します。

大腸がんは増加している

国立がん研究センターの予測によれば、2015年の日本で一番罹患数が多いがんは大腸がんとなっています。2014年の予測では胃がんが一番多いとされていましたので、大腸がんが大いに増加していることが分ります。2015年の罹患数は、予測では135,800人となっており、過去40年間で5~6倍の増加となっています。

大腸がんが増えている理由は、高齢者が増えていることや食事の欧米化、内視鏡検査の普及などが挙げられます。

部位として多いのはS状結腸と直腸で、この部分で大腸がんの約7割が発生してます。

大腸がんの自覚症状は早期がんではほとんどありません。

進行した時の症状は、血便、便通異状、腹痛の3つが典型的です。

出血に関しては通常、大量に出血する事は無く、便に付くとか便の最後に濁った赤黒い地がどろっと出るなどのケースが多いようです。痔と間違いやすいのですが、痔の出血は明るい赤なので、同じ出血でも異なります。

便通異常は、便が細くなったり、便秘と下痢を繰り返すなどが特徴的なパターンです。さらに進むと腸閉塞による腹痛や嘔吐などが見られます。

大腸がんは早期発見すれば怖いがんではありません。しかし進行して発見されれば相応のリスクが伴います。冒頭でも申し上げました通り、日本で大変に増加しているがんです。自覚症状があればもちろんの事、無い場合でも定期的な大腸がん検診などを受けることが肝要ではないでしょうか。

大腸ステント治療

がんによって大腸が閉塞することがあります。そのような状態になると便や消化液やガスが腸管内に溜まってパンパンの状態になり、患者さんは激しい苦痛に襲われ、適切な処置を行わなければ命に関わってしまいます。

そのような場合、かつては緊急手術で人工肛門を増設するのが一般的でしたが、現在では大腸ステントによる治療も可能になっています。

ステントとは金網を筒状にした医療器具で、大腸用に作られたものが大腸ステントです。

たたむと小さくなるので、このステントを内視鏡を使って大腸の閉塞している部分に挿入し、そこで解放させ留置するものです。最大で2cm程の径になりますが、実際には周囲にがんがあるので最大の大きさまでは大きくなりませんが、便が通過できる程度には広がります。便が通過できるようになれば緊急手術を回避できますので、人工肛門を回避できるのです。

大腸ステントは大きく二つの治療に分けられます。

一つ目は、切除手術が可能な患者さんに対する手術前の閉塞解除治療。

二つ目は、切除手術ができない患者さんに対する緩和的な治療です。

ステントを入れることが出来るのは結腸と上部直腸となります。ステントを入れるのにかかる時間は通常15分程度で、ステントを入れた後は普通の生活が可能になります。(食事には若干の注意が必要です)

日本では大腸がんにかかる方が急速に増えてきていますが、ほぼ1割の方が閉塞を起こしていると言われています。人工肛門は患者さんのQOLを低下させますが、大腸ステントで閉塞を解除できれば人工肛門を回避できます。2012年からは保険適用になっておりますので、選択肢として取り入れることができるのではないでしょうか。