がんによって大腸が閉塞することがあります。そのような状態になると便や消化液やガスが腸管内に溜まってパンパンの状態になり、患者さんは激しい苦痛に襲われ、適切な処置を行わなければ命に関わってしまいます。
そのような場合、かつては緊急手術で人工肛門を増設するのが一般的でしたが、現在では大腸ステントによる治療も可能になっています。
ステントとは金網を筒状にした医療器具で、大腸用に作られたものが大腸ステントです。
たたむと小さくなるので、このステントを内視鏡を使って大腸の閉塞している部分に挿入し、そこで解放させ留置するものです。最大で2cm程の径になりますが、実際には周囲にがんがあるので最大の大きさまでは大きくなりませんが、便が通過できる程度には広がります。便が通過できるようになれば緊急手術を回避できますので、人工肛門を回避できるのです。
大腸ステントは大きく二つの治療に分けられます。
一つ目は、切除手術が可能な患者さんに対する手術前の閉塞解除治療。
二つ目は、切除手術ができない患者さんに対する緩和的な治療です。
ステントを入れることが出来るのは結腸と上部直腸となります。ステントを入れるのにかかる時間は通常15分程度で、ステントを入れた後は普通の生活が可能になります。(食事には若干の注意が必要です)
日本では大腸がんにかかる方が急速に増えてきていますが、ほぼ1割の方が閉塞を起こしていると言われています。人工肛門は患者さんのQOLを低下させますが、大腸ステントで閉塞を解除できれば人工肛門を回避できます。2012年からは保険適用になっておりますので、選択肢として取り入れることができるのではないでしょうか。