免疫とは何か?

人間を含む生物には、細菌やウィルスのような病原体や寄生虫のような異物、あるいはがん細胞のような異常な細胞を排除して、自らを防御するための仕組みが備わっています。この仕組みこそが免疫です。

免疫は自然免疫と獲得免疫に大別されます。

自然免疫は生まれつき備わっており、獲得免疫に先行して作用する仕組みとなっており、ナチュラルキラー(NK)細胞、マクロファージ、樹状細胞などが中心的役割を果たしています。

一方、獲得免疫は後天性の免疫とも言われ、T細胞やB細胞が中心的な役割を果たします。獲得免疫のシステムは異物(抗原)に遭遇するたびに、それぞれの抗原ごとに最良の攻撃方法を学習し、抗原を記憶します。獲得免疫は特異免疫とも呼ばれますが、それは過去に遭遇した抗原に対し、それぞれに応じた(特異的な)攻撃をするからです。

その優れたところは、学習し、適応し、記憶する能力にあります。体が新しい抗原に接しても、獲得免疫ができるまでには時間がかかります。しかし、こうしてできた特異免疫は記憶されるので、同じ抗原に対するその後の反応は、自然免疫に比べて素早く行われ、効果も高まります。この特異免疫反応があるために水ぼうそう(水痘)やはしか(麻疹)は、一度かかると二度とかかりません。また病気によっては予防接種で発病を予防できます。

近年、自然免疫が獲得免疫の誘導に重要な役割を果たすことも明らかになってきました。

がんのセミナーをお聞きいただいて

少し前にセミナーを聞いて頂いた保険代理店の方が、保険の業界新聞(保険情報)に取材を受けました。

そのセミナーは生命保険会社さんにお呼びいただいたセミナーで、保険をお取り扱いしている方々向けのセミナーです。

がん患者さんと接していて感じるのですが、がんになった時には保険の役割は本当に重要なものとなります。しかし、ただ単純にがん保険に加入していれば良いと言うものでも無いと感じています。

取材された方はセミナーを聞いていただいて、すぐに実行していただきました。

素晴らしい行動力で、既に多くの方々が守られはじめています。

これからも多くの方々が守られることと思います。

もし、がんに罹患した時の準備をどうしたら良いか考えている方がいらっしゃればご相談ください。良い方をご紹介いたしますよ。

保険情報

セミナー開催しました

保険会社さんにお招きを頂きまして、セミナーをいたしました。

至らぬ点も多々あったでしょうが、皆様のお役にたてる情報をお届けできるように一生懸命にお話しさせていただいたつもりです。ご質問も積極的に頂きました。

ご参加いただいた皆様から、少しでも多くの方々に伝わると本当にうれしいと思います。

がんセミナー

がんは何故再発するのか?

がんは完治が難しい病気といわれます。なぜならば、がんは治ったように見えても再発する可能性があるからです。

つまり、がんの怖さは再発・転移にあるのです。

ではなぜ再発するのでしょうか?再発の理由としては、主に3つの理由があると言われています。

一つ目は、治療後にもわずかながん細胞が残っている場合があることです。手術の際に目に見える(画像に写る)がん細胞を全て取ったとしても、見えないがん細胞が残ってしまったり、すでに他の臓器に転移している場合などは、その残されたがん細胞が増殖して、再度がんとして成長をはじめる場合があります。

二つ目は、ひとたびがんを発症した患者さんは、例えがんの除去に成功したとしても「がんになりやすい状態」の身体そのもは変わっていないためです。どういうことでしょうか。がんはいくつかの遺伝子の変異が積み重なって発生する病気です。一方で、がんを発症した方の身体の中には、がんが出来たところ以外のところにも遺伝子の変異が生じている可能性があります。それゆえに再発の可能性が高いと言えるのです。

三つ目は、がん治療の過程で抗がん剤治療や放射線治療を受けたことが、がん発症の原因になり得るからです。放射線や抗がん剤の多くは、DNAを傷つけることによってがん細胞を殺します。しかしこの治療法では正常細胞の一部も遺伝子が傷つけられてしまい、その細胞ががん化することが有り得るそうです。

がんの再発は治療後2~3年以内に起こることが多く、一般的には遅くても5年以内に再発すると言われています。ですから一般の固形がんは5年間再発しなければ治癒と言う言葉が使われます。しかしながらがんの種類によっては乳がんのように10年以上経ってから再発する例もあります。そのような観点からも、5年経過してからも定期的な検査は大事です。

食生活と大腸がん

従来、「大腸がん」は欧米で多いがんと言われていましたが、近年では日本でも急増しています。

国立がんセンターが予測する2015年日本のがん罹患者数では男女合わせると2014年の胃がんを抜き、大腸がんがトップとなっています。その人数は、予測では135,800人となっており、過去40年間で5~6倍の増加となっています。(性別毎では男性のトップは前立腺がん、女性のトップは乳がんです)

何故、大腸がんが急増しているのでしょうか?その一因は日本人の食生活が欧米化したことだと言われています。

実際に、アメリカへ移住した日本人の「大腸がん」発生率が白人並みに上がってしまったことや、菜食主義者や肉類や動物性脂肪の摂取量の少ない国や地域では、「大腸がん」の発生率は低い傾向にあることなども報告されています。(日本も過去はそうでした)

更に「大腸がん」のリスクは、保存・加工肉の摂取量の多い人達の方が高くなることも確認されていますが、これは動物性脂肪による細胞分裂促進作用や、動物性タンパクの加熱により生成される発がん性物質などによるものではないかと考えられています。また肥満やアルコールの摂取も、「大腸がん」の発生リスクを高めることが確認されています。

つまり、今や日本人に最も多くなってしまった「大腸がん」を予防するには、アルコールの摂取量を減らすとともに、保存・加工肉の摂取量を少なくし、更に肥満に注意することが重要となります。また十分な野菜の摂取、定期的な運動も大切なこととなります。

大腸がんは早期発見すれば怖いがんでは無いとは言われていますが、罹患しないに越したことは無いのではないでしょうか。

進行非小細胞肺がんに対する免疫チェックポイント阻害薬「オプジーボ」の効果

以前に取り上げたことがありますが、オプジーボ(ニボルマブ)という、悪性黒色腫で承認されている薬剤があります。下記にも記載しましたが第Ⅰ相の臨床試験では非小細胞肺がんにも効果がありました。

この薬剤に関して、2015年の米国臨床腫瘍学会で、2件の第Ⅲ相の非小細胞肺がんに関する臨床試験結果が報告されました。

進行再発の非小細胞肺がんの2次化学療法として、従来から使用されているタキソールとの比較をした海外での臨床試験結果です。

それによれば非扁平上皮がんを対象とした試験でも、扁平上皮がんを対象とした試験でも、オプジーボが全生存期間を優位に延長されることが明らかになりました。両試験ともⅢB期とⅣ期で、既に化学療法を受けたけれども進行してしまった方々を対象にしています。特に扁平上皮がんでオプジーボの優位性が示され、全生存期間だけではなく、奏効率や無増悪生存期間中央値など、すべての評価項目でオプジーボが上回ってました。

また、この臨床結果の生存曲線からは、治癒の可能性さえも感じさせる結果となっているそうです。

日本では比較試験ではない、第Ⅱ相の試験が行われましたが、オプジーボでの治療結果として海外のデータとほぼ同様の結果が得られているそうです。

ただし、オプジーボは非常に高価な薬です。例えば体重60キロの方が悪性黒色腫で使用するとなると、1回の薬価が90万円弱、年間で約1,500万円にもなります。もちろん健康保険適用であれば自己負担はぐっと少なくなりますが、現状で認可されているのは悪性黒色腫に関してのみです。

悪性黒色腫以外のがんに関しても早期の承認が待たれるところです。(2015年12月に切除不能な進行・再発非小細胞肺がんに対する承認がされました。)

早期乳がんの再発予防の為のホルモン療法薬について

エストロゲン受容体陽性の非浸潤性乳管がんの、閉経後女性に対する再発予防を目的としたホルモン療法の比較試験が米国の複数の施設で実施され、その結果がASCO2015(2015年米国臨床腫瘍学会学術集会)で報告されました。

比較されたのはタモキシフェン(ノルバデックス、タスオミン)とアナストロゾール(アリミデックス)です。

タモキシフェンはエストロゲンとがん細胞が結合するのを阻害するのに対し、アナストロゾールはエストロゲンの生成を抑制すると言う作用機序の違いがあります。

比較試験では非浸潤性乳管がんで腫瘍摘出と放射線療法による治療を受け、がんの残存が確認されていない3,104人を対象に5年間に渡り、それぞれを投与しました。

10年後の結果をみると、両薬剤とも乳がんの再発抑制が見られましたが、再発を見られなかった患者の割合は、アナストロゾールで93.5%、タモキシフェンで89.2%、とのこと。

ASCO2015ではこの結果を踏まえ、標準治療として使われるタモキシフェンよりもアナストロゾールの方が当該ケースではすぐれていると報告されました。

追加全脳照射のリスクとベネフィット

がんが脳転移した場合、手術で脳転移病変を除去できるケースは限定されてきます。

脳転移病変が小さく、数も少ないケースでは脳腫瘍部位に放射線を照射する定位放射線治療を行いますが、その後、術後療法・救援療法・終末期治療などとして、全脳照射(WBRT)を実施することもあります。

しかし、ASCO2015(2015年米国臨床腫瘍学会学術集会)で報告された、米国立衛生研究所(NIH)が助成した第Ⅲ相試験では、1~3個の小さい脳転移病変(最大径3㎝以下)があるケースでは、定位放射線治療後に全脳照射を追加した場合、病変の増大は制御されるものの、全生存期間(OS)は有意に延長しないことが示されました。また、認知機能低下などのリスクは高く、リスクがベネフィットを上回ると報告されています。

本試験は日本人で実施されたものではないので、そのまま我々に当てはまるかは不明です。しかしながら、本件に限らず、リスクとベネフィット(便益)を意識しながら治療を選択すると言うことも大切ではないでしょうか。

切除不能肝転移大腸がんへのラジオ波焼灼療法の有効性

2015年米国臨床腫瘍学会学術集会(ASCO2015)において、切除不能肝転移大腸がんの治療で、ラジオ波焼灼療法の併用が生存率を改善すると報告がありました。

これは切除不能の肝転移性大腸がんに関して、「化学療法単独の治療」と「化学療法とラジオ波焼灼療法の併用治療」を比較した第Ⅱ相試験での結果で示されました。

化学療法は6か月のFOLFOX療法※の後にアバスチン(ベバシズマブ)の追加投与が行われると言う形で実施されています。

追跡期間中央値9.7年間後の結果報告では、無増悪生存期間(PFS)の中央値が化学療法単独群が9.92か月に対して併用群は16.82か月、また全生存期間中央値は単独群が40.54か月に対して併用群が45.6か月と、両郡間に有意差が認められたと報告されています。

※FOLFOX療法:フォリン酸(FOLinic acid)・フルオロウラシル(Fluorouracil)・オキサリプラチン(OXaliplatin)の3剤併用による化学療法を意味します。

乳がんの陽子線による研究治療

鹿児島県の指宿にある「メディポリス国際陽子線治療センター」では2011年の開業以来、先進医療として陽子線を使ったがんの治療を行っています。今までの治療実績は1,500人以上に上るそうです。

ご存知の方も多いと思いますが、重粒子線や陽子線治療にはブラッグピークと呼ばれる、ある深さで線量が大きくなると言う特徴があります。それを上手にコントロールすることにより、がん病巣を狙い撃ちして、正常細胞にはあまり影響を与えない放射線治療が可能になります。

この度、この治療法をメディポリス国際陽子線治療センターでは乳がんに対して研究治療を開始しました。特許を出願している乳房を固定する装置と独自のシステムを使用し実施します。今回実施している患者さんには26回照射を行う予定です。早期に見つかった小さな乳がんであれば、切らずに治療できると言いますので、来年度の一般患者受け入れが待たれるところですね。

(参照:KYT鹿児島読売テレビ)