がんが脳転移した場合、手術で脳転移病変を除去できるケースは限定されてきます。
脳転移病変が小さく、数も少ないケースでは脳腫瘍部位に放射線を照射する定位放射線治療を行いますが、その後、術後療法・救援療法・終末期治療などとして、全脳照射(WBRT)を実施することもあります。
しかし、ASCO2015(2015年米国臨床腫瘍学会学術集会)で報告された、米国立衛生研究所(NIH)が助成した第Ⅲ相試験では、1~3個の小さい脳転移病変(最大径3㎝以下)があるケースでは、定位放射線治療後に全脳照射を追加した場合、病変の増大は制御されるものの、全生存期間(OS)は有意に延長しないことが示されました。また、認知機能低下などのリスクは高く、リスクがベネフィットを上回ると報告されています。
本試験は日本人で実施されたものではないので、そのまま我々に当てはまるかは不明です。しかしながら、本件に限らず、リスクとベネフィット(便益)を意識しながら治療を選択すると言うことも大切ではないでしょうか。