胃がんの縮小手術

胃がんの手術では定型手術が標準治療となっています。胃に関連したリンパ節に転移した可能性のある場合はこの定型手術が行われます。

定型手術は胃の3分の2から5分の4程度の切除と切除範囲の領域のリンパ節すべてを、その周りの脂肪組織とともに切除します。日本ではがんが出来る場所との関係もあり、胃の出口の方の幽門側を切除する、幽門側切除が行われます。全摘も含め、幽門がなくなると、食物が一気に腸に流れるため、低血圧、発汗、めまい、低血糖状態が現れるなどの「ダンピング症候群」などが発生しやすくなります。

このような障害を軽減し、手術後のQOLを上げる目的で行われるのが縮小手術です。

縮小手術は定型手術と比較して胃の切除範囲を縮小するとともに、リンパ節を取り除く範囲も縮小した手術です。

胃の切除範囲の縮小にはいくつかの選択肢がありますが、その一つに幽門保存切除術があります。これは胃の出口である幽門を残すことによって、上記ダンピング症候群の発生や腸液が胃に逆流するのを防ぐことができます。また、胃以外の組織の切除縮小範囲としては、胃に付着している大網と言う脂肪組織の多い膜を残せます。これにより、腸の癒着の程度を減少させ、腸閉塞が起こる危険性を少なくできます。また、胃の周囲の神経を温存することにより、手術後に下痢が起こりにくくなり、また胆石が出来るのも防げます。

このような縮小手術の適応は、リンパ節転移の可能性はあっても低いこと、がんが粘膜内か粘膜下層にとどまっていることが条件となり、内視鏡治療適応外のがんに対して行われます。