がんと糖尿病の関係その2

日本でも増加している糖尿病ですが、一般的に、糖尿病の患者の方はそうでない方よりも寿命が短いと言われています。

その差は男性で9.6歳、女性では13歳も違うそうです。

では糖尿病患者さんの死因はどうなっているのでしょうか。1980年代までは血管障害(腎障害、虚血性心疾患、脳血管障害)が1位でしたが、1990年代からは、がんが第1位になっています。これはどういうことだと思いますか?

その答えは、合併症予防の取り組みが進んだことにより血管障害で亡くなる方が減少したからだと考えられています。つまり、血管障害で亡くなる方が減少し、糖尿病患者さんが長生きになったので、がんで亡くなる方が増加しているということです。

この傾向は、今後ますます強まるのではないでしょうか。ですから糖尿病患者さんにとっては、失明したり、透析になったりする事とともに、がんになると言う事も現実的であると言う事なのです。

以前にも申し上げましたが、最近の調査では、糖尿病とがんの合併は単なる偶然では無いことが明らかになっています。日本のデータでは前立腺がん以外のがんは、糖尿病で増加するのです。(欧米でのデータも同じ傾向を示しています。

それは何故かと言うと、糖尿病とがんには共通のリスク因子があるからだと言われています。

リスク因子としては、変えられるリスク因子と変えられないリスク因子があります。

変えられないリスク因子は、「加齢」「性別」「遺伝子型」があります。糖尿病とがんは、どちらも年齢とともに増える病気で、男性の方がなりやすい。さらに特定の遺伝子型がある方は、どちらの病気にもなりやすいと言う事が分ってきています。しかし残念ながらこれらは変えようがないものです。

他方、変えられるリスク因子としては「肥満」「食事」「運動不足」「喫煙」「飲酒」といった生活習慣があります。これらの生活習慣は、糖尿病だけではなく、がんをも増やすことになるそうです。つまり、糖尿病とがんの間に直接の因果関係が無いとしても、これらのリスク因子を持っている方は、両方の病気になりやすいと言う事になるわけです。

しかし、これらは修正可能なリスク因子でもあります。つまり改善できると言う事なのです。これらのリスク因子に心当たりのある方は、生活習慣の改善をはじめては如何でしょうか?

がんと糖尿病の関係 その1

以前は、糖尿病になるとがんにならないという都市伝説?がありました。

しかしながら実際は、糖尿病患者さんはがんになりやすく、がん患者さんは糖尿病を起こしやすいと言われています。

2013年の5月に日本癌学会と日本糖尿病学会の合同委員会では「糖尿病とがんのリスクに関する報告」が発表されました。この報告によれば糖尿病がある人は無い人に比べて、全がんで1.2倍の発症リスクがあると言われています。

何故ならば、糖尿病とがん発生の間には、肥満、運動不足、喫煙、飲酒などの共通の原因もありますが、インスリン抵抗性や高血糖など、糖尿病の病態ががんを増やすリスクになると言われているからです。特に増加しやすいのは肝がんで糖尿病のない人の1.97倍のリスクであり、膵がん、大腸がん、子宮体がんと乳がんもリスク増加すると言われています。

また、もともと糖尿病があった患者さんに、がんが出来た場合の特徴的な症状として、血糖コントロールが悪化する事が多いと言えます。ですから、特に食べ過ぎてもないし運動量も以前と同じなのに血糖値が上がるなど、特別な理由もないのに血糖コントロールが悪くなる場合、その原因としてがんが隠れていることがあるので、十分な注意が必要です。

肝がんの原因NASH(非アルコール性脂肪肝炎)

がんと糖尿病の関係 その2

受動喫煙(パッシブスモーキング)の害

タバコを吸っている本人が吸い込む煙を主流煙、タバコの先から立ち上る煙を副流煙と言います。同じタバコから出ている煙ですが、主流煙と副流煙では成分が異なります。その副流煙を吸ってしまうことを、受動喫煙(パッシブ・スモーキング)と言います。

普通に考えれば、直接吸う煙の方が有害物質が多いように思われますが、実はその逆だそうです。その理由は、主流煙と副流煙は温度が違うことと、主流煙はフィルターを通ることもあり、ニコチン、タール、ベンツピレン、一酸化炭素、窒素酸化物、アンモニアなど、有害物質のどれもが副流煙の方が多いと言われています。当然ですが、副流煙は空気中で薄まりますので、そこに居る人が煙のすべてを吸ってしまうわけではありませんが、非常に有害であることは間違いありません。

そのために、受動喫煙をしている方たちは、非喫煙者に比べて肺がん死亡率は1.19倍になると言われています。また、狭心症や心筋梗塞の死亡率も1.25倍になると言われています。

更に、喫煙者の呼気の中にも有害物質が含まれていると言う研究者も居ることを考えると、タバコを吸うと言う事は、自分の身体への自己責任を持つと言う事だけにとどまらず、大切なご家族など周囲に影響を及ぼすと言う事もご理解いただきたいと思います。