胃がんの手術方式は大きく分けると、おなかを切り開く開腹手術と、おなかに小さな穴をあけて器具を挿入して行う腹腔鏡手術があります。腹腔鏡手術には傷口が小さいので術後の痛みが少なく回復が早いと言うメリットがあります。
ですので、胃がんの手術における腹腔鏡手術の割合は年々上昇しています。ただ、通常の腹腔鏡手術には、細かい作業がしにくいとか、画像が2次元なので奥行きが分りにくいなどの欠点があります。そのような欠点を減らすように進化したものが、最新の手術支援ロボット「ダヴィンチ」を使った「ロボット内視鏡手術」です。
ダヴィンチ手術は前立腺がんの手術では公的医療保険の対象として承認されており、現在日本全国で200台以上のダヴィンチが稼働しています。しかし胃がんに関しては昨年に先進医療として承認されたばかりで、実施している医療機関も限られています。
最新のダヴィンチSiはアームの可動域が大きく、狭い場所でも人間の手よりも器用に動かせます。更に高性能の手ブレ防止機能が付いており、手術の精度が上がることになります。また、モニターで見られる画像が3Dである事も大きな利点です。奥行きが感覚的につかめるようになり、更に映像を10倍にまで拡大できるので、手術がやり易くなっなります。結果、手術の精度が上がり、合併症のリスクが軽減され、予後にも良い影響を与えます。
非常に素晴らしいダヴィンチ手術ですが、注意しなければならない点がいくつかあります。
まず、ダヴィンチは手術ができない患者さんを手術できるようにすることが出来るわけではありませんし、切除範囲を小さくすることが出来るわけでもないと言うことが重要な点です。
更に、ダビンチによる胃の手術を先進医療で実施することが出来るのは全国では5か所の医療施設だけです。先進医療で受ける場合は
- がんのステージが1または2まで
- 85歳以下の年齢
- 糖尿病がある場合、血糖コントロールが適切に行われている
等の条件を満たす必要があります。
また費用に関しては、総費用199万250円で、先進医療に係る費用は130万9,400円ですが、このうちの50万円はダヴィンチのメーカーが無償提供してくれるので、患者負担は80万9,400円となり、残りの68万850円は保険診療扱いとなります(どちらの費用も第22回先進医療会議資料より)。