がんのクロノテラピー(時間治療)

がんのクロノテラピーとは、1980年代にフランスで始まった抗がん剤の投与方法です。

いわゆる抗がん剤は、一般的には細胞分裂が活発な細胞に対して働きかけます。さらに言えば抗がん剤は、毒であり、毒だからこそ、がん細胞を攻撃することが出来るのです。しかしだからこそ、がん細胞だけでなく細胞分裂が盛んな正常細胞をも傷つけてしまうので、副作用などが発生するのです。

そこで、がん細胞が活発になる時間帯と正常細胞が活発になる時間帯のずれを上手に利用して抗がん剤を投与出来ないかと考えられたのが、「クロノテラピー(時間治療)」です。

一般的には正常細胞は朝から昼に掛けて活発化し、夜に向けて活動が低下し、真夜中にもっとも沈静化します。一方がん細胞の分裂リズムは一定はしていないですが、真夜中、寝ているときに盛んになり、昼間は低下する事が多いといわれています。

そのような状況にも関わらず、一般的な抗がん剤の投与は午前中から始めるケースが多いようです。経口剤にしても朝と夕方飲むケースが多いようです。しかしこの時間帯は、細胞の活性リズムに照らし合わせて考えると、正常細胞に働きかける時間帯です。クロノテラピーでは夜の10時位から投与を始めます。

つまり正常細胞が沈静化しがん細胞が活発化する時間帯を狙うわけです。使う薬剤は新しい薬ではなく既存の抗がん薬を使います。正常細胞が寝ているときに行うので副作用が出にくいので、通常より多くの薬剤を投与できることになります。

それにより抗腫瘍効果もあがると言うことになります。日本では横浜市立大学が早くから実施していて、肝臓がんや大腸がんの肝転移などに治療しているようです。

しかしながら、日本ではあまり取り入れる病院は増えていないようです。 夜間に実施する人員や、診療報酬、そしてクロノテラピーを行う際に有効なクロノポンプも未承認な事も日本で進展しない一因だと言われています。

ちなみにクロノテラピーはがんだけでなく、喘息や高血圧治療でもやっていたりしますし、2012年の4月に放映されたNHKのクローズアップ現代ではリュウマチの治療も取り上げていましたので、リュウマチでお悩みの方がいらしたらご一考されるのも良いかもしれませんね。