非小細胞肺がんのうち、EGFR(上皮成長因子受容体)遺伝子に変異があるタイプのがんはEGFR-TKI(上皮成長因子受容体チロシンキナーゼ阻害薬)と呼ばれる薬剤を用いて治療が行われます。EGFR-TKIについては第一世代のイレッサやタルセバ、第二世代のジオトリフが日本では承認されています。ところが、これらの薬剤を使用して数か月から1年で「薬剤耐性」が生じて薬剤が効かなくなります。
耐性が起こるメカニズムでよく起こるのは次の2つです。
1つは、薬は結合するものの、EGFR以外の経路から増殖シグナルを伝えるようになってしまうタイプです。MET遺伝子とよばれるものが過剰に増殖し、がんの増殖シグナルを出す場合などです。
そして最も多く、EGFRの耐性を獲得した症例の50%以上に見られるのが、EGFRの遺伝子の特定の場所に遺伝子変異が起こり(主にT790M変異陽性)、薬剤が結合しなくなるタイプです。
このEGFR-TKIによる治療後に病勢が進行したT790M変異陽性の非小細胞肺がんに効果を発揮する薬剤として期待されているのが第3世代薬のAZD9291(TAGRISSO タグリッソ オシメルチニブ)です。米国では2015年11月にFDA承認をされており、国内でも優先審査品目に指定されていて、今年の3月には承認される見込みとなっています。
ただし副作用としては5~6%の患者さんに間質性肺炎が生じたようですので、注意が必要です。
この薬剤の登場により、EGFR-TKIを使用していて耐性が起きた後には、耐性の原因を特定するための再生検の重要性はますます高まっています。